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PRIDEの聖地“SSA” 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2005/10/31 00:00

PRIDEの聖地“SSA”<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 すっかり見なれた光景──。

 都心から40〜50分、『さいたま新都心駅』の改札を出て、ごったがえす人波に身をまかせつつ歩道を歩いていくと、広場の奥に巨大な白い建物が現われる。

 『さいたまスーパーアリーナ(以下SSA)』

 PRIDEに出場が決まったある選手が感慨を込めてこう言う。

 「やっぱ、PRIDEといったら『SSA』っすよね。あそこで戦えるのは、ある意味、格闘家にとって“夢”とか“誇り”みたいなもんですよ」

 “格闘技の聖地”といえば、連日のようにボクシングやプロレスが開催されている『後楽園ホール』を思い浮かべるが、ことPRIDEに限って“聖地”とは、『SSA』を指すのである。

 PRIDEの興行は、現在『ナンバーシリーズ』、『グランプリシリーズ』、『武士道シリーズ』、『男祭り』とあるが、'97年10月に開催された『PRIDE.1』を皮切りに、今年末の『男祭り−2005−』までを総計すると全52大会いうことになる。

 使用会場の打ち分けは以下のとおり。

*SSA……18回

*横浜アリーナ……10回

* 東京ドーム……7回

* 名古屋レインボーホール……5回

* 大阪城ホール……4回

* 有明コロシアム……3回

* 福岡マリンメッセ……2回

* 日本武道館、西武ドーム、大阪ドーム……各1回

 まさに『SSA』ひとり勝ち、という感じで、とくにこの2年間は20大会中10回が行なわれ、PRIDE=『SSA』といっても過言ではない状態にある。

 初めてPRIDEで使用されたのは、'01年12月に開催された『PRIDE.12』。当時は、「珍しい場所でやるなあ」と思っていたのも、いまや懐かしい話しである。

 都心からちょっと離れているとはいえ高速道路のインターチェンジも近いので選手たちの送り迎えに不便もなく、また他の会場のように民間企業が経営しているのではなく官民共同出資の第3セクターによる事業体なので比較的使用料が安いというのが重宝がられている理由らしい。また、可動式の客席(ムービングブロック)といった多目的ホールならではの特殊性により、チケットの売れ行きをみながら機能的かつ経済的な会場設置ができるのも魅力である。例えば、先日の『PRIDE.30』のような2万人オーバーぐらいの集客ならば“アリーナ”という会場全体をぐーんと狭めた方式を使い、『グランプリ決勝』や『男祭り』といった大一番には会場をめいっぱい広げ4万人前後集客できる“スタジアム”という方式を採用する。

 つまるところ“ハコがでかすぎて客スカスカ”、といった情けない状態が起こりにくいし、また武道館が集客1万人、ドームが5万人ということを考えると実に使い勝手のきく便利な会場といえるのだ。現在のPRIDEのブランド力における集客を考えれば、これほど適した場所はない、ということになる。横浜アリーナや東京ドームと比べても、試合の見やすさは『SSA』のほうが格段に上だ。

 記者にとってもここは使いやすい会場で、プレスルームが非常に広く、モニターが何台も設置されているのがうれしい。他の会場のようにすし詰め状態のなか遠くにあるたったひとつのモニターをジッと見つめる必要がないのは、ストレスにならずありがたい。

 難点があるとすれば、いささか郊外ということと、まわりに飲食店が少ないので(それでも数年前よりはかなり多くなった)、大会後、ちょっと一杯やりながら今日の試合を語る、といったことがのんびりできないことぐらいか。

 すでに名勝負をいくつも演出してきた『SSA』。これからも、PRIDEの醍醐味を味わえる“聖地”として、その存在をさらに不動のものにしていくだろう。

 蛇足だが、'00年9月にオープンしたときの“こけら落とし”は、バスケットボールの『日本VS.スペイン』、初コンサートは『V6』という。この手の新設会場一番公演は『HOUNDDOG』か『THE ALFEE』と相場が決まっていることを考えれば、個人的には「ふーん」と唸ってしまうトリビアなのだ。

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