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「完全なるスター」誕生ならず。
RENA完敗で群雄割拠の女子格闘界。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2011/06/07 10:30

「完全なるスター」誕生ならず。RENA完敗で群雄割拠の女子格闘界。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2011年6月5日、後楽園ホールで行なわれたSB日本レディース王座決定戦。高橋藍(写真右)は、首相撲からRENAをマットに叩きつけるなど、パワーで圧倒し、見事王座に輝いた

 いわゆる“ブーム”が去って久しい日本格闘技界が今もっとも必要としているのは、新たなスターの出現だ。

 かつて桜庭和志や魔裟斗がそうだったように、世間を巻き込む存在。そのポジションに限りなく近いと目されているのは、19歳の女子選手、RENA(レーナ)である。

 デビュー当時から“女子高生ファイター”として注目され、抜群のルックスもあって雑誌、テレビなど一般メディアにも進出。シュートボクシングの女子トーナメント『Girls S-cup』で2連覇を達成しており、実力も申し分ない。昨年8月以降はケガによる欠場が続いていたが、その間のテレビ出演で知名度はむしろ上がっていた。バラエティ番組の企画で格闘技経験のある芸人を3人立て続けにKOしたのもこの時期だ。

日本格闘技界が描いた青写真と想定外の事態。

 6月5日のシュートボクシング後楽園大会、RENAは13年ぶりに復活した女子タイトルの王座決定戦に臨んだ。

 トーナメント優勝だけでなく正王座を手にすれば、格闘技界におけるRENAの地位はいよいよ盤石なものとなる。この一戦に勝ち、4月にエキシビションマッチでダウンを奪われた女子ムエタイ2冠王・神村エリカとの“頂上決戦”が実現すれば、格闘技界が世間に向けて切ることのできる最大のカードになるはずだった。

 そんなストーリーに割って入ったのが、高橋藍だった。

 編集者として会社勤めをする傍ら2年前にプロデビューを果たすと、昨年のトーナメント決勝でRENAと延長2ラウンドまでもつれ込む接戦を演じ、その敗戦後は3連勝を飾っている。欠場していたRENAと、連勝した高橋。その勢いの差は、試合でも如実に表れた。

 対戦相手を負傷させることもしばしばある高橋の右ストレートとヒザ蹴りは、誰の目にも明らかな形でRENAの体力を削っていった。

「2ラウンドにRENA選手がニヤニヤ笑ってるのを見て、逆に『ああ、苦しいんだな』と思いました」

 高橋は試合後にそう振り返っている。

【次ページ】 「背負ってきた過去」に負けたRENA。

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