チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
予選の好カード。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byREUTERS/AFLO
posted2007/08/07 00:00
チャンピオンズリーグ予備予選2回戦のセカンドレグが、今月の7日と8日に行われる。しかし、その3回戦の組み合わせ抽選は、その結果が出る前に実施された。
注目カードは、セルティック対スパルタク・モスクワになる。中村俊輔が出場するから、というわけではない。客観的視点に基づく感想だ。互いに実力伯仲。これぞ、3回戦きっての一番になる。
1、2回戦を免除されたチーム同士の対戦。シードのプライオリティが、最も高いチーム同士の対戦であるという事実も、好勝負必至の気配を後押しする。
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セルティックが昨季、ベスト16入りを果たしたのはご承知の通り。片やスパルタク・モスクワは、グループリーグで3位に終った。しかしバイエルン、インテルと同組だったことを考えると、また、セルティックが対照的に、楽な組で戦ったことを踏まえると、ほぼ互角という予想が妥当になる。UEFAクラブランキングでは、43位対78位でセルティックがスパルタク・モスクワに対し、優位に立つのであるが。
スパルタク・モスクワが、チャンピオンズリーグで最後に見せ場を作ったのは、95〜96シーズンに遡る。そのグループリーグを、6戦全勝、得点15、失点4というダントツの成績で通過し、存在感を欧州に広くアピールしたのだ。
当時、欧州では、アヤックスが抜群の強さを誇示していた。負けなし記録を更新している最中だった。しかし、スパルタク・モスクワは、そのアヤックスを凌ぐ勢いを、グループリーグで見せつけていた。瞬間、欧州No.1チームの座に君臨していたわけだ。タレントも充実していた。オノプコ、ニキフォロフ、アレニチェフ……。
しかし、その中心メンバーの多くは、グループリーグが終了するや、旧西側クラブに、ごっそり綺麗に買い取られていった。大幅な戦力ダウンを余儀なくされたチームは、準々決勝であっさり敗退。資本主義経済の競争原理の中に、悲しい性を露わに呆気なく飲み込まれることになった。とりわけ、判官贔屓の僕には、忘れ得ぬ思い出である。
昔話はともかく、今季の戦いで興味をそそられるのは、中村俊輔がかつてのチームメイトと再び顔を合わせることだ。チェコ代表のイラネクとブラジル人のモザルトは、元レッジーナ所属。チャンピオンズリーグ本選を懸けた大一番で、再会を果たすとは。中村俊輔もいまごろ、世の中の狭さについて、さぞ驚愕しているに違いない。
三都主、宮本が所属するザルツブルグも、実力伯仲の相手と3回戦を戦うことになりそうだ。2回戦のセカンドレグを終えていない段階で、先の話をするのは気が引けるが、そのファーストレグのアウェー戦を、3−0のスコアで先勝しているので、よほどのことがない限り3回戦進出は堅いと読むことはできる。ウクライナのシャフタール・ドネツクとの対戦に気が早る。
UEFAの最新ランクでは38位。159位のザルツブルグにとっては格上の存在だ。チャンピオンズリーグ本選にも再三駒を進め、馴染みのチームにもなりつつある。04〜05シーズンはグループリーグ3位、昨季も同様に3位と、近年は惜しい戦いを続けている。04〜05シーズンにはセルティックと同じグループで戦い、成績で上回った実績も見逃せない。
しかし昨季に比べれば、遥かに楽な対戦相手だ。ザルツブルグは、昨季も3回戦に進出したが、バレンシアに惜敗。ファーストレグの初戦には1−0で勝利を収めたが、セカンドレグは0−3で完敗。実力の違いを見せつけられている。バレンシアの当時のUEFAランキングは9位。ザルツブルグがどう背伸びしても手が届かない相手だった。しかし今季の相手は38位。難敵ながら、可能性は抱かせる。
今季日本人のチャンピオンズリーガーは何人誕生するのか。今風に言えば「当選者」は1人なのか、複数なのか、はたまたゼロ人なのか。いつかもこのコラムで述べたことだが、チャンピオンズリーグで、日本人選手の姿を見ることはちょっとした感動だ。ナショナリズムは、どこからともなく湧いてくる。好むと好まざるとにかかわらず、という感じでだ。晴れの舞台であり、一流の舞台であることが、それを後押しする理由だろう。
また、依然として希少価値であることも輪を掛ける。その数を増やさない限り日本の将来は暗いという心配は、必然的に湧いてくる。チャンピオンズリーガーが1人しかいない代表チームと、5人いる代表チームとでは、どちらが強いか。答えは簡単。アフリカのマリに代表される、その数を伸ばしてきている国もある。ワールドカップ出場。アジア予選突破ではなく、目標を本大会のベスト16入りに据えようとすれば「日常のW杯」で活躍する人数は、問われてしかるべき問題になる。
候補者3人の全員当選を、願うばかりだ。