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冬季五輪の新ヒロイン高木美帆は、
「チームパシュート」でメダル狙い!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKeisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO
posted2010/01/15 10:30
昨年末の12月28日から30日、長野でスピードスケートのバンクーバー五輪代表選考会が行なわれた。岡崎朋美が500mで2位となり5回目の代表を決めたのも見事だったが、大会でもっとも話題をさらったのは、一人の中学生だった。
現在中学3年の15歳、高木美帆である。
初日の3000mで3位となると、翌日の1000mでは3位となり、五輪代表の座を確実にする。
圧巻は最終日の1500mだった。
第1組で出場の高木の同走は吉井小百合。トリノ五輪に出場し、今選考会後にはバンクーバー五輪代表にも選ばれた選手である。
高木は前半こそ大きくリードされるが、粘り強く食らいつく。徐々に差を詰めていき、最後のコーナーでついに逆転。吉井はスプリンターであり、500、1000mを得意とする。それでも実績のある主軸の選手を相手に堂々としたレース運びだった。
記録は1分59秒47で、この時点でトップ。最終組まで高木を上回る選手が現れず、優勝したのだ。
「順位がびっくりすぎて、実感が湧かないです」
1500mの優勝のあと、高木は、喜びとともに驚きも隠さなかった。
大会後、代表選手が発表され、高木もメンバーに名を連ねた。これまでの17歳での出場の記録を抜き、日本スピードスケート史上最年少での五輪出場が決まった瞬間だった。
恵まれた身体能力と豊富な練習量が急成長の原動力に。
高木自身、今回の成績に驚いていたが、周囲にとってもそれ以上の驚きだった。日本スケート連盟の橋本聖子会長も、「経験が少ないのにこれだけのレースをできることがすごい。言葉がないです」と語っている。
とはいえ、高木の成績そのものは決して偶然の結果とは言えない。
高木は、小学生時代から、将来を嘱望される選手として北海道では注目を集めていた選手だ。中学に入学後は全国大会でも活躍するようになり、昨年2月の世界ジュニア選手権にも出場。総合4位の活躍を見せている。
技術面では、コーナー出口でスピードが落ちない良さがある。3000mでラップタイムをほとんど落とさなかったように、安定した滑りもできる。
また、高木はサッカーでも、日本サッカー協会が有望選手を集めて実施した合宿にも参加するなど将来を嘱望されている。身体能力の高さの証明である。
15歳とはいっても、技術を備え、身体的にも恵まれた選手なのだ。むろん、周囲も認める練習熱心さも、高木の急成長を支えている。