濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
青木真也vs.川尻達也は「検討中」。
大晦日対決が即決しなかった理由。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2009/10/12 08:00
川尻は青木に「2人だったらDREAMで世界最高峰ができると思う」と対戦を求めるも、青木は「最高峰は僕なんで……、検討します」とスルリとかわした
大晦日の話題性よりも重要だったもの。
即答なんてしたくない。できるはずがない。それが、青木の偽らざる心境だったはずだ。試合を前にしたインタビューや公開練習で、彼は何度となく「とにかく勝ちたい」、「もう絶対に負けたくない」と口にしている。昨年はライト級GP決勝でハンセンに負け、あえて階級を上げて臨んだ今年4月のウェルター級GP開幕戦では桜井“マッハ”速人にKOされた。あの時のような思いは二度としたくない。選手にとって白星ほど重いものはない。まして、これはタイトルマッチなのだ――。
そういう思いで掴んだ勝利とチャンピオンベルトを、予告編などにされてはたまらないだろう。誰もが予想していなかった青木のジョークは、勝負の世界に身を置く者としての、真っ当すぎるほどの異議申し立てだったのではないか。
観客の視点から見ても、青木真也vs.川尻達也戦に予告編は不要だ。少なくとも両者の軌跡を知る者にとっては、PRIDEが活動を休止した時点から、2009年大晦日へと続く物語、すなわち“本編”がスタートしているのだから。