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平山相太 新しき道で。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
posted2005/09/15 00:00
平山相太は新しい道を作った。
〈筑波大学に進学し、休学してオランダのヘラクレス・アルメロへ移籍〉
もしJリーグのチームに入団すれば、2、3年は海外移籍を諦めなければいけない。有望な若手を、簡単にチームが手放すわけがないからだ。その間に移籍金が高くなるから、国外への移籍はさらに難しくなっていく。
だから、高校を出たらJリーグではなく大学に行き、そして「移籍金ゼロ」という利点を生かして、国外のリーグへ飛び出る。今まで誰も気がつかなかった“抜け道”だ。今後、有望な高校生がこの“平山ルート”をマネしないかと、Jリーグ関係者はヒヤヒヤしているに違いない。
さすが“中田英寿の再来”と言われる平山。もちろん最初から、狙ってた?
「いや、全然考えてませんでした。結果オーライって感じです(笑)。自分の世代はワールドユースと五輪が最年長のときにあって、アピールする場が多いっていうのは考えていたけど、たまたまですよ」
新しい道を作るときは、そんなものだ。先駆者のあとに、道はできていくのだから。20歳のストライカーの冒険は、誰も気づかなかった最高の方法でスタートしたのである。
「今年のワールドユースで世界を相手にして、自分が2年前のワールドユースの時と比べて変わってないと感じました。心の中も整理できて、海外でできるならやってみたいと思ったんです」
今年6月、オランダのワールドユースで平山は大きなショックを受けた。オランダ戦で1得点したものの、それ以外はほとんど自分の仕事ができなかったからだ。
「大学に行くときは、自分の中でまだサッカーが一番じゃなかったんです。だって中学生のとき、めちゃくちゃ勉強しましたもん。高校に入って全然やってないですけど、そこそこの成績を残すことができたし、行けるなら大学に行きたいと思った。両立したかった。なんでもやりたかった。でも、このままじゃ、サッカーも、勉強もダメになると思った。だから決断しました。もうオレの人生、サッカーだけだ、ってね」
目標は来年のドイツW杯。
結果を出せばついてくる。
ワールドユースがおわると、平山のもとにはオランダのフェイエノールトとヘラクレス、そしてベルギーの名門アンデルレヒトとクラブ・ブルージュからオファーがやってきた。
実戦の場を求め、その中から最も小さいクラブを平山は選んだ。
──ヘラクレスに入団してどう?
「まだ自分ができてないところがあるけど、まあ、何とかなるっていう感じです」
──自信があるからきた?
「いや、そういうのじゃなくて、ただうまくなりたかったから」
──中田英寿に顔が似てると言われる?
「よく言われますね(笑)。自分ではそんな思わないですけど。でも最近はもう言われなくなった。多分、みんな飽きたんですよ」
──でも中田のように計算するタイプではなく、結構のんびりしてるよね?
「だって中田さんは、高校のときに分刻みで計画を立ててたんですよね?― 自分は、そうじゃない。まあ、中田さんは“物を使ったらすぐに戻す”と本に書いてあったので、マネしてますが(笑)」
──日本人FWはナイーブな印象があるけど、キミはちょっと違いそうだ。
「いや、多少はナイーブな面もありますよ。あります!― でもボーっとしてるね、ってよく言われるんです。試合中もやる気ないねって、友だちが言ってくる。ワールドユースも、オランダ戦はめちゃくちゃ集中してたけど、あとの2試合はやる気なさ過ぎだろって。もう反論ですよ。大反論。中学のときから言われ続けてますが……」
若くて一見ボーっとしている、そんな見た目が功を奏してか(?)、平山はヘラクレスでもすぐに打ち解けることができた。みんなから親しみを込めてちょっかいを出される存在になっている。
たとえば、こんな賭けをした。
(以下、Number636号へ)