欧州CL通信BACK NUMBER
最強の守備と最強の攻撃が激突!!
CL準決勝レアル対バルサを完全予想。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byGetty Images
posted2011/04/26 12:20
3週間に4回激突することになった今回のラリー・クラシコ。国王杯決勝で劇的勝利を収め、1勝1分けとこれまで有利に運んでいるモウリーニョだが、真の目標は「異なるクラブで3回CL王者になること」とも言われている。雌雄を決する戦いは、CLでの2回のクラシコだと考えているのではないだろうか
バルサの勝利はペドロの動きがキーポイントになる。
モウリーニョもこの試合後、「後半はバルセロナのペースだった」と語ったことから、今回の対戦では問題点を修正し、より守備精度を高めてくるだろう。バルセロナにとってはより難しい状況となる。
モウリーニョが敷いた鉄壁のレアル守備網は不落なのだろうか?
それともバルセロナに打開するチャンスはあるのだろうか?
リージョはレアルが固く閉ざすゴールへの扉を開く鍵は存在すると言う。
「サッカーに完璧は有り得ない。簡単ではないがバルサには必ずチャンスがある。鍵を握るのはペドロの動きだ。レアルの3人はバルサの3人に集中するからこそ、あそこまで高い精度で守備が行えた。だが、もしもバルサがシャビ、イニエスタ、メッシに選手をもう一人加えることができれば、数的優位になるのはバルサだ。
重要なのはシャビ、イニエスタ、メッシとペドロが常に近い距離を取ることじゃない。例えばペドロが右サイドに開いた位置にいる場合を思い浮かべて欲しい。粘り強くボールを動かす中で彼はインサイドに入りながらポジションを下げる動きを、3人のうちの誰かと交差できるタイミングで行う。レアルの中盤は背後から入るペドロへの対応がわずかに遅れるし、ペドロをケアしようとすれば彼と交差する別のバルサの選手は自由を得る。
これを成功させるにはペドロが自分の範囲内にボールが展開されてくる3~4プレー前からボールの動きを読み、自分が動くのに最適なタイミングを見つけなければいけない。早すぎればその動きを察知したレアルのSBから自由になることはできないし、中央のスペースをより狭くしてしまう。遅ければバルサはもう一度、攻撃を組み立てなおすことになる。戦術眼的にも技術的にも本当に難しく高度なプレーだが、ペドロが得意とするプレーでもある。そこにバルサの可能性があると私は考えている」
リージョは両チームの攻防を以上のように分析してくれた。だが、彼はこうも語っている。
「私たちは様々な情報を基に分析や予想をするが、そういったこと全てを超越したことが起きるのもサッカーだ。例えば2年前のチェルシー対バルサを思い出して欲しい。イニエスタのあのゴールがあの場面で生まれることを誰が予測できただろうか。時として、それまでも起きたことがなく、これからも起きることのない奇跡が起きるのがサッカーだ。今回もまたそれが起きる可能性はゼロだと誰が言える?」
「サッカー史を塗り替える対決になるだろう」(フィーゴ)
史上最強と謳われるまでの攻撃サッカーを展開してきたバルセロナと、その攻撃を封じる守備を敢行して驚異的な連動性と一体感を手にしたレアル。
打ち合いを挑み0対5とKOされたリーガの一戦目があったからこそモウリーニョはTrivoteを軸とした超守備的なレアルを生み出し、国王杯を勝ち取った。堅守を軸にタイトルを勝ち取ってきたモウリーニョはやはり守備によって勝利を手にしたのだ。
対するグアルディオラは国王杯決勝後の「必ず立ち上がる」という言葉をTrivote攻略によって実現するのだろうか。目の前に立ちはだかる鉄壁のレアルを崩す攻撃をバルセロナが展開することは、攻撃サッカーに新たな変化がもたらされたことを意味する。
両クラブで活躍したルイス・フィーゴは「サッカー史を塗り替える対決になるだろう」とこの対決を予想する。
最強の攻撃に対するからこそ、最強の守備が生み出され、それを凌駕するためにまた攻撃が進化する。新たな変化が生まれる可能性に満ちているバルセロナとレアルの激突を見逃すわけにはいかない。
(取材協力:パウ・フステル/Pau Fuster)