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戒厳令直前のタイは、キックに燃えていた。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2006/10/12 00:00

戒厳令直前のタイは、キックに燃えていた。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 「大変です。タイでクーデターが起こりました」。9月19日夜、携帯電話で事件を知らされた現地在住のテレビカメラマンが叫んだ。

 「クーデター?」。全日本キックのタイ遠征を取材するため、バンコクに滞在していた私は驚きの声をあげるしかなかった。その2日前、一緒にラジャダムナンスタジアムのリングに上がりながら明暗を分けた大輝と山本元気、そしてほんの1時間ほど前までルンピニースタジアムで闘っていた遠藤智史は揃ってキョトンとした表情を浮かべていた。それはそうだろう。日本人にとってクーデターは身近な政変ではない。中でもラジャで大惨敗を喫した挙げ句、相手のヒジ打ちによって額を計16針も縫った山本にとってはそれどころではなかった。そんな山本とは対照的に今回の遠征で唯一勝利を飾った大輝は屈託ない笑顔を浮かべながら、「もっとタイで闘って、ラジャのウェルター級王者になりたい」と力説していた。

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