欧州CL通信BACK NUMBER
「諦めないよ」と内田に微笑んだ長友。
CL前王者インテルがホームで5失点!!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byMaurizio Borsari/AFLO
posted2011/04/06 12:30
「日本の皆さんに、僕らの気持ちは絶対に伝わると思っていたので、必死に戦いました」(長友)。「チャンピオンズリーグでの日本人対決は初めてになるのかな? 今後、次から次へと日本人選手は出てくると思うんで……」(内田)
「おつかれっス!」
試合後、ミックスゾーンに現れた長友佑都はひときわ陽気な声で、すでに報道陣へ応対していた内田篤人の首を抱え込んだ。快活な笑顔の長友と飄々とした内田。2人の表情だけを見て、どちらが勝者か判断するのは難しかった。
欧州の頂を目指すチャンピオンズリーグ。セミファイナル行きをかけての第1戦、2人の日本代表が殿堂サン・シーロで相まみえた。試合開始27秒、ホームのインテルが先制点を奪ったとき、誰がその後の展開を予想できただろうか。
前年王者インテルは、2対5でシャルケを相手に壊滅的な敗北を喫した。
完敗したミラノ・ダービーの汚名をそそぐはずだったが……。
そもそもこの試合には、インテルにとって二つの大きな意味合いがあった。
一つは3日前に行われ、0対3の完敗を喫したミラノ・ダービー後の仕切り直しだ。
昨年のクリスマスにレオナルドが新監督となったことで、一時は絶望視されたスクデットに希望の光がさした。脅威の勝率でセリエA首位ミランとの勝ち点差をみるみる縮め、残り7節の時点で迎えたダービーは、首位奪取のための千載一遇のチャンス。しかし開始45秒でパトからまさかの先制弾をくらうと、ゲームプランは完全に崩壊。指揮官の戦術アプローチは失敗し、退場者を出した挙句に惨敗した。
レオナルドは、8万人のミラン・サポーターから「貴様は裏切り者ユダ」と怒号を受け、メディアは「4-2-ファンタジア(1-3)なるものが、いつでも通用すると思っているのか」と酷評した。怒りに満ちたレオナルドだったが、「ダービーでの敗戦は私をより強くした」とシャルケ戦の前日会見で気丈に振舞った。敗北から立ち直る妙薬は、新たな勝利をおいて他になかった。
そして、シャルケ戦でのもう一つの重点要素は、エースFWミリートの復活である。
今季のミリートは太腿やふくらはぎの筋肉故障に悩まされ続けた。だが、彼は昨季達成した3冠のうち、すべての決定試合でゴールを決めた“3冠男”。今季絶不調といえど、サポーターからの非難を免れているのはそういう事情がある。レオナルドは、ミリートを約7カ月ぶりにCL先発復帰させることを決めた。彼の完全復帰は、シーズン最終盤に向けて最高の起爆剤になるはずだった。