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日本ラグビーの雄、吉田義人、新たな旅立ち。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byShinsuke Ida
posted2004/05/06 00:00
「お前はヨシダか?」
いったい何人の人にそう訊かれたことだろう。1992年4月、NZで記者はたいへんな質問攻めと握手攻めにあった。何も記者が“ヨシダ”に似ていたわけではない。その時期、NZに滞在していた日本人の多くが、そんな経験を持ったはずだ。ラグビーについてなら世界一目が肥えているはずのキーウィたちは、その日目撃したトライを頬を赤くして語り、讃え、日本人と見れば誰彼なく握手を求めていたのだ。
トライを奪われたのは、誇り高き黒の軍団オールブラックス。奪ったのは世界選抜の背番号11、日本代表のWTB吉田義人だ。イングランドのCTBガスコットがゴールライン上に蹴り上げたキックを弾丸となって追い、頭から飛び込み、伸ばした腕の先で落ちてきたボールを掴むと同時にグラウンディング。「あんな凄いトライは一度も見たことがない。NZ人なら誰も忘れませんよ」。後にそう言ったのは、16歳のときスタンドの一角でスーパートライを目撃したジョナ・ロムーだ。その男のプレーを語るとき、人は誰も熱くなった。