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松木安太郎の異変“イラン戦解説で消えた”ユーモア…日本代表“テレビ放送”でまさかの連敗、サッカー不人気時代を知る男「焦りの正体」 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/02/05 17:00

松木安太郎の異変“イラン戦解説で消えた”ユーモア…日本代表“テレビ放送”でまさかの連敗、サッカー不人気時代を知る男「焦りの正体」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

テレビ朝日系で放送されたアジアカップのイラン戦で解説を務めた松木安太郎氏

後半22分16秒
内田:これ今ね、イランの実況の人も松木さんの隣にいるんですけど、松木さんとおんなじくらい白熱してましたよ、今。

松木:ホント(笑)。オフサイドだよ。このやり方(オフサイドディレイ)はちょっとダメだな!

 冷静に話して熱を和らげようと試み、松木氏を笑わせた。三笘薫がドリブルで右サイドを駆け上がるもタッチラインを割ってしまった時、内田氏はこう呟いた。

後半31分47秒
松木:出たか。

内田:見逃してくんないかな~見たかったな~。

松木:(笑)。そっから先が。

内田:ドリブルを。

松木:ホントだよな。

「見逃してくんないかな~」はイメージで松木氏の言葉と勘違いしたが、よく聞き直してみると、内田氏が発していた。普段なら松木氏が思わず口にしそうな一言であったが……。

 いずれにせよ、イラン戦の松木氏は普段以上に審判に抗議していた。どうして、我を忘れるほど必死だったのだろうか。

「地上波で負ける…」サッカー愛ゆえの焦りか

 サッカーの裾野を広げるためには誰でも見られる地上波テレビで中継しなければならないという信念があったからではないか。今大会は有料配信の『DAZN』が全試合を中継し、無料のテレビでの日本戦はグループステージの1試合と準々決勝以降に限られた。イラン戦以外で唯一のテレビ放送となったイラク戦も敗北を喫していた。

 松木氏は、サッカー不人気時代の生き証人である。読売クラブでサイドバックとして戦っていた約40年前、日本リーグの試合は観客2000人程度と閑古鳥が鳴いていた。そのため、今も底辺の拡大を願ってやまないのだろう。鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルでは解説者としての初心を〈サッカーを観たいという人たちを1人でも増やそうというのが第一歩〉(2023年9月23日配信)と振り返っている。

 次のアジア杯も日本戦のテレビ中継は現状維持、もしくは減少の可能性があるだろう。サッカー界の未来を考えれば、勝ち進まなければいけない。誰よりも松木氏は優勝を願っていたはずだ。だから、力の限り、「オフサイドだろ! オフサイドだよ! そんなもんオフサイドだろ!」と猛抗議して、日本を鼓舞したのではないか――。

 “松木氏の異変”ともいえる切羽詰まった解説の裏には、サッカーを愛するがゆえの焦りがあった。

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