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大谷翔平にあの“ヒザつき本塁打”を打たれて「とても悔しいです…」阪神・才木浩人24歳、“公立の星”ドラ3ピッチャーが佐々木朗希に勝つまで 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/06/23 17:04

大谷翔平にあの“ヒザつき本塁打”を打たれて「とても悔しいです…」阪神・才木浩人24歳、“公立の星”ドラ3ピッチャーが佐々木朗希に勝つまで<Number Web> photograph by JIJI PRESS

6月4日ロッテに完封勝利。佐々木朗希に投げ勝ち、笑顔で手を振る阪神・才木浩人(24歳)

 3年後にソフトバンク1位指名となる佐藤直樹外野手(→JR西日本)にレフトに放り込まれると、後半4イニングで4失点。最後まで投げきったが、1対5で敗れ、高校野球生活にピリオドを打った。

 現在は、「150キロ台の快速球と必殺フォーク」が代名詞となる才木。だが高校当時はそれほど頼りにできる変化球もなく、頼みの速球で抑えようと力むほどシュート回転して中に入って、コースが甘くなる。打者が詰まらせても人のいない場所に落ちて、ヒットになっていた。

3年前のトミー・ジョン手術

 2016年のドラフト3位指名で阪神タイガースに入団。その4年目、2020年秋に右ヒジのトミー・ジョン手術を受けた。人間には、手首付近と足首付近に「使わない筋」があるらしく、それを患部の靱帯に移植するそうだ。

 ヒジ内側にははっきりと手術痕が残り、同手術を経験したある元投手は、

「やっぱり痛めた時の記憶や痛みを思い出すので、意識して見ないようにしてますね。見ると、腕を振るのが怖くなるんで、どうしても。医学的には治ってても、ピッチャー本人は覚えてるから、腕を振るのが怖い……そっちのほうが致命傷になるんですね。自分の場合は、手術したほうが前より強くなるっていうのを、ただ盲信するしかなかったです」

 トミー・ジョン手術から2年後となる昨年、一軍マウンドにカムバック。8試合の先発で47イニング投げて4勝1敗、防御率1.53という「結果」を残した才木。

 さらに今季はすでに5勝3敗、およそ64イニングで68三振を奪って防御率1.41(6月18日現在)と成績を伸ばし、セ・リーグペナントレースの先頭を走るタイガース投手陣の頼もしい柱の一角として、堂々チームを支えている。6月4日の交流戦ではロッテの佐々木朗希を相手に、9回12奪三振の完封劇で投げ勝った。

 快速球とフォークの凄みばかりが報じられるが、189cmの長身から渾身の腕の振りで投げ下ろすオーバーハンドで、これだけ球筋のブレが少ないコントロールは、さらにすばらしい。このコントロールあればこそ、打者にとって、武器の凄みがさらに手ごわさを増す。

あの“ヒザつきホームラン”を打たれて…

 この春、3月6日、WBC強化試合に先発した才木浩人。その3回、自慢の必殺フォークを、完璧に捉えられてバックスクリーンまで持っていかれて、マウンドでがっくりと膝を突いたあの反応に、才木投手の「確かな自信」を見たような気がした。試合後には「初見のフォークを完璧に打たれてしまったのでとても悔しいです」と話している。

 いつの間にか、もうプロ15年目になる西勇輝を軸に、伊藤将司、大竹耕太郎、村上頌樹……先発陣に次々人材が現れ、青柳晃洋、西純矢の実積十分組も戻ってくるだろうから、酷使されることはないはずだ。

 しばらくは「サンデー浩人」として、あの笑顔で奮投するのを期待したい。

 1998年生まれの24歳。まだまだこれから……フォームに無理がないのが、なによりの味方だ。大事に使ってもらえば、タイガース投手陣の「レジェンド」にだってなれる快腕に違いない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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