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「高津監督も高校時代は控え投手だし」「だって月謝は同じなのに…」広澤克実60歳が“肩ひじを守る少年野球リーグ理事長”になったワケ

posted2022/11/02 17:25

 
「高津監督も高校時代は控え投手だし」「だって月謝は同じなのに…」広澤克実60歳が“肩ひじを守る少年野球リーグ理事長”になったワケ<Number Web> photograph by Kou Hiroo

広澤克実さんに少年野球「ポニーリーグ」の理事長就任の経緯を聞いた

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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2年連続のセ・リーグ優勝を果たしたヤクルトは、“ノムラの遺伝子”が残っているとされる。その野村克也監督との結びつきが強い広澤克実氏(60)に現役当時の思い出、現在少年野球で取り組んでいることを聞いた(全2回の2回目/初回#1から読む)

 引退後の広澤克実氏は、2007~08年にかけて阪神で打撃コーチを務めた以外は、野球指導者の道を歩まず、解説者、評論家として活躍してきた。

打撃コーチ、大変な割に面白くなかったんですよ

「打撃コーチを2年間やりましたけど、大変な割に面白くなかったんですよ。この2年間で、僕はサラリーマンの方の大変さがよくわかりました。上司と部下みたいな関係ができて、自分は右と思っても、上司が左と言ったら従わなければいけない。

 一般社会ならディスカッションしたりするんでしょうが、野球界って縦社会なんで上が左と言ったら左に行かなければならないんですよ。

 そういうのが1回だけならいいんですが、野球って年間140何試合あるじゃないですか。ことごとく上と意見が合わなくて、でも結局責任取らされるのは打撃コーチで。こんなつまんないことやってもしょうがないな、って思いました」

 思わず筆者は「広澤さんは、思ったことはそのまま言ってしまうタイプですね」と聞いてしまったが、広澤氏は「そうですね。だって正しいと思うことは譲りたくないですからね」とあっさりと答えた。

「だから組織には向いてないんですよ」

「球数制限」を取り入れた少年野球リーグの理事長に

 筆者は数年前から少年硬式野球団体の「ポニーリーグ」の取材を続けてきた。高橋由伸や石井一久、現役ではオリックスの宮城大弥、阪神の梅野隆太郎なども輩出した老舗の少年野球団体だが、「我々の国家の宝である青少年の成長を守ろう」「野球は試合に出て覚えよう」を掲げて、全選手の試合出場、リエントリー制度などをルール化してきた。

 また、いちはやく球数制限を取り入れ、低反発金属バットを導入するなど、他の少年野球団体とは一線を画する方針を次々と打ち出し、少年野球界ではほとんど唯一、競技人口、チーム数が増加していた。

 このポニーリーグの理事長に、広澤氏が就任したのは2018年のことだった。

 それまで広澤氏が少年野球や“野球離れ”に関心があると聞いたことはなかったのだが――このあたりの事情、さらっと流そうかとも思った。ただ、広澤克実という野球人の人柄を知る上でも大事だと思うので、就任の経緯を紹介したい。

【次ページ】 高津の才能を見つける人がいなければ…

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