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“マイアミの奇跡”を知っているか?
西野朗という男が胸に秘めるもの。 

text by

戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byKatsuro Okazawa/AFLO

posted2018/04/16 07:00

“マイアミの奇跡”を知っているか?西野朗という男が胸に秘めるもの。<Number Web> photograph by Katsuro Okazawa/AFLO

1996年アトランタ五輪、「マイアミの奇跡」。A代表では日本はいまだブラジルに勝利したことがない。

真っ向勝負を求める空気の中で。

「ブラジルに勝つのは難しい」との現実的な意見も、もちろんあった。ただ、そうした意見は二段階で成立していた。

「勝つのが難しいのなら、世界でどれぐらいできるのかを知るためにも、いつもどおりのサッカーをするべきだ」との願望が付随していたのである。根拠は様々だったものの、真っ向勝負を求める空気が醸成されていく。

 ブラジルは2年前のアメリカW杯で、24年ぶりの世界王者に返り咲いていた。左サイドバックのロベルト・カルロス、天才肌のMFジュニーニョ・パウリスタ、センターフォワードの怪物ロナウドらは、23歳以下の五輪世代でありながらフル代表に選出されていた。

 さらに、W杯優勝メンバーのDFアウダイールとFWベベット、のちにセレソンの主力となる24歳のリバウドが、オーバーエイジで加わっていた。

攻めるために守る、という選択。

 根拠のない期待が渦巻くなかで、西野は現実的な決断を下す。

「我々のグループを突破するためには、ブラジル、ナイジェリアに真っ向勝負を挑むのは無理があった。だからこそ、ボールを奪うディフェンスにこだわった。失点をしないためではなく、数少ないチャンスをつかむために守るという意識を徹底させようとした」

 1対1の局面で身体を張る。足を止めずにハードワークする。チャレンジ&カバーを怠らずに数的優位を作り出す。1トップの城もトップ下の前園も、守備に奔走した。

 勝つためのシナリオを遂行していった日本は、相手守備陣の連係ミスを突いた伊東輝悦のゴールで1-0の勝利をつかむ。ブラジルの失点パターンを、映像を使って選手たちに刷り込んだ成果だった。

 ナイジェリアとの第2戦は0-2で敗れたものの、ハンガリーには3-2で競り勝った。日本は勝点6でブラジル、ナイジェリアと並んだものの、得失点差でベスト8進出を逃した。最終的にナイジェリアは金メダルを獲得し、ブラジルは銅メダルを持ち帰ることになる。

【次ページ】 「最初から守備的な試合をしたい監督はいない」

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