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桐生祥秀が臨む「内なる戦い」。
世界陸上で絶対に必要な選手として。 

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宝田将志

宝田将志Shoji Takarada

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photograph byTakashi Shimizu

posted2017/08/04 08:00

桐生祥秀が臨む「内なる戦い」。世界陸上で絶対に必要な選手として。<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

日本陸上日本選手権の100mでの桐生。大きな大会へ向けての“ピーキング”の難しさを痛感した敗北となった。

より高みを目指した桐生を、責められる者はいない。

 今季、桐生はずっと「ピークは夏」と語っていた。

 本来の力を出し切れず予選敗退に終わった昨年のリオデジャネイロ五輪。

 今度こそ世界で勝負するという思いは強かった。

 結果論で言えば、シーズンを通じた計画を立てる段階で18歳のサニブラウン、21歳の多田の急成長を読み切れなかったことが敗因とも言えるが、敢えて日本選手権を“通過点”にしようとした選択を、より高みを目指そうとした挑戦を誰が責められるだろうか。

「世界陸上は家で見ることになると思います。行けるパターンはないと思う」

 しかし、そう語っていた桐生を日本陸連はリレー要員として代表に選出した。

 伊東浩司強化委員長は「織田記念で1位だったこと、(世界選手権の)参加標準記録を安定して突破していたこと、リオ五輪での活躍を踏まえて」と、その理由を説明する。

悔しさのエネルギーを、さらなる前進へと繋げて。

 日本男子ショートスプリントは四継で「決勝の常連」となり、世界のトップと競い続けることで選手達に経験と自信を与えてきた。その伝統は代表に入った選手全員でつなぎ、そして深みを増してきたものである。

 近年を振り返っても、例えば、'13年モスクワ世界選手権では現地で山縣亮太が故障。急遽、リレー要員だった藤光謙司が2走に入って6位入賞を果たした。15年世界リレーでは故障で代表を辞退する者が相次ぎ、代わりに招集された谷口耕太郎、大瀬戸一馬らの活躍もあって銅メダルとリオ五輪の出場権を勝ち取っている。

 リオ五輪の真相に迫った『四継 2016リオ五輪、彼らの真実』が8月3日に発売になったが、日本男子トラック種目で史上最高成績となる銀メダルも、4人のレギュラー、2人のリザーブ、苅部俊二や土江といったスタッフ、関係者の全ての取り組みと思いが、がっちり噛み合ったからこそ勝ち得た栄光なのである。

【次ページ】 桐生とサニブラウンはチームの大きな核。

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