ぶら野球BACK NUMBER
三冠王、監督、GM時代の落合博満。
知られざる「オレ流の素顔」を読む。
posted2017/05/14 08:00
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Shigeki Yamamoto
あなたは落合博満をどれだけ知っているだろうか?
先日、ぶらりと書店に行ったら、多くの落合本が並んでいた。栄光の三冠王時代から監督生活まで。ここで「あれっ渋ちんGM時代は?」なんてクールな突っ込みは野暮だろう。人は誰でも触れてほしくない過去がある。とにかく「史上最多3度の三冠王」や「監督8年間で4度優勝」の圧倒的実績に裏付けされたプライドは半端ない。
そんな数々の自著本の中で、落合は不遜なオレ流キャラを自ら演じて楽しんでいるようにすら思える。
例えば、1998年引退直後に出版された『野球人』(ベースボール・マガジン社)の中では、実績のない若手との4番争いを「私は小学生の算数の答案と大学院生の代数学の研究論文を比べて、どちらが優秀かと言っているような4番戦争に終止符を打つために意地になっただけである」なんて三冠王を舐めんなよ的に一刀両断。
全盛期の'85年に2度目の三冠王獲得も悲願の球界初の日本人1億円プレーヤーには届かず、年俸9700万円で契約更改した時の心境は「三度目の三冠王を獲得すれば王さんの二度もクリアする。名実ともに球界No.1のバッターだ。それが1億円にふさわしいと言うのなら、すぐにでもやってみせよう。それも、史上初の2年連続50本塁打のおまけをつけて達成してやろう」ってもはやビッグマウスを通り越した“ザ・オレ流ワールド”炸裂。
監督を退任した2011年に出版された『采配』(ダイヤモンド社)の帯は「孤独に勝たなければ勝負に勝てない 勝利を引き寄せる66の言葉」とほとんどビジネスマン向けの自己啓発書のような装いだ。
「少し天然の入ったオヤジ」「情に厚いおっさん」
いつも冷静で気ままなポーカーフェイス。
恐らく、一般的な落合博満のイメージも“三冠王”と“名監督”が元になっているのではないだろうか。
だが、現役晩年の巨人や日本ハムの時代の実像は少し違う。
というのも、'90年代中盤から後半の落合とかかわった野球人の著書を読むと、そこで書かれている落合像は「少し天然の入ったオヤジ」であり、「情に厚い人のいいおっさん」だ。
今回の『ぶら野球』ではそんな知られざる現役晩年の落合博満の素顔を野球本から読み解いてみよう。