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「この決断が本当によかったのか」
黒田博樹、迷いから覚悟へ至る道。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/02/20 10:30

「この決断が本当によかったのか」黒田博樹、迷いから覚悟へ至る道。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

カープのユニフォームに袖を通し、キャッチボールする黒田博樹。

 仕事で広島に来てみたら、町は「黒田フィーバー」だ。

 タクシーに乗っても、カフェでコーヒーを飲んでいても、必ずと言っていいほど黒田博樹の話題になる。この町では、野球が「キング・オブ・スポーツ」で、黒田というひとりの投手が、これほどまで存在感を持っていたのかと、改めて驚かされた。

 実は黒田がロサンゼルスでトレーニングをしていた時期に、彼の著書『決めて断つ』の増補版のために、単独インタビューを行なった。今回、カープに帰る決断を下した理由を聞きに行ったのである。

 その段階では、「この決断が本当に良かったのかどうか、まだ分からないんですよ」と本心を吐露していたが、広島市内で行なわれた会見での「凛」とした姿を見て、「覚悟が固まったな」という印象を受けた。

頑固どころか、合理性を尊ぶ黒田博樹。

 今後、3月27日の開幕に向けてチェックポイントとなっていくのが、日本球界への対応である。

 マウンドの高さと傾斜、メジャーに比べ革が柔らかく、縫い目の低い公式球。ひとつ、ひとつ適応=アジャストメントしていく必要がある。

 私が思うに、黒田という投手は日本人メジャーリーガーの中でも、最高の適応力を持っていた選手だと思う。

 今回、カープに帰る決断をしたことで、「男気」という言葉に代表されるように、義理堅く、頑固一徹なところがある――。そんなイメージが強いと思うが、アスリートとしての黒田博樹は極めて柔軟なのである。

 たとえばメジャーに移籍した時に、練習方法に馴染めない日本人選手も多い。しかし黒田は違った。メジャーの練習方法について、こんなことを話してくれたことがある。

「何年もかけて、最高のものを追求してきた結果がいまの練習になっているわけでしょう? もちろん、これからも進化するでしょうが、何か理屈が通ってることがあるはずなんです。『自分には合わない』と思わずに、『どこが自分に合うんやろ』と前向きに考えた方がいいと思うんですよ」

 頑固どころか、極めて論理的で、合理性を尊ぶ人間だというのが私の持つ印象だ。この姿勢がメジャーで7年間、第一線で投げ続けられた秘訣だと思う。

【次ページ】 合理性の源は、狭い広島市民球場。

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