美しくも脆いパスサッカー。
~サンフレッチェ広島と岡田ジャパン~

木崎伸也 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Shinya Kizaki

photograph by Toshiya Kondo

美しくも脆いパスサッカー。~サンフレッチェ広島と岡田ジャパン~

 『支配率』とか『シュート数』が、役に立たないことは重々承知しているのだが、これだけ際立った傾向があると、さすがに注目せざるをえない。

 今季のサンフレッチェ広島、支配率とシュート数がずば抜けているのだ。

 これまでの13試合で、広島が支配率で負けたのは、3節の鹿島戦と8節の名古屋戦だけ。シュート数で負けたのは、4節のガンバ大阪戦だけだ。細かい“算数”をして恐縮だが、支配率なら11勝2敗、シュート数なら9勝3分1敗となる。ほとんどの試合において、ホームだろうがアウェーだろうが、支配率で上回り、より多くのシュートを打っているのだ。

 だが、その全てが結果に結びついているわけではない。

 現在の成績は、5勝5分3敗の6位。昇格組にしたら十分に健闘しているのだが、これだけの試合内容があれば、さらに上を目指せるはずだ。「パスをつなぐ攻撃サッカー」という心地よい賛辞に満足していたら、2部の悪魔がまた忍び寄ってくるだろう。

 なぜ、広島はいいサッカーをするのに、生かし切れないのだろうか?

広島の「スペースを作って、使う」スタイルの長所と短所。

 広島の攻撃のコツは、誰かが走って作ったスペースを、他の選手が使うことにある。たとえば1トップの佐藤寿人がサイドに流れ、中央に空いたスペースに2列目の高萩洋次郎や柏木陽介が走りこんでシュート――というように。最終ラインからDFの槙野智章が駆け上がってくることもある。

「Jリーグのチームは、ほとんど同じシステムでプレーしている。こういう、後ろから走り込むサッカーをすれば、うちにもチャンスがあると思った」

 かつてオシムの右腕を務めたペトロビッチ監督は、自らの戦術をこう説明する。Jリーグを徹底的に研究し、手持ちの駒を見渡した結果、このスタイルに着地した。

 しかし、「スペースを作って、使う」ことが前提になっているだけに、人数をかけられてスペースを消されると、途端に攻撃の切れ味が悪くなってしまう。

 11節の千葉戦が、それを象徴していた。千葉がDFラインを高くして中盤のプレッシャーを激しくすると、広島は危険なエリアでボールを持つことができない。支配率65%対35%、シュート数22対8と内容では優ったが、試合に勝ったのは千葉だった。

 では、広島はどうすればよかったのか?

► 【次ページ】  日本サッカーは、ロングボールへの嫌悪感を無くすべき。

(更新日:2009年5月26日)

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筆者プロフィール

木崎伸也

木崎伸也

1975年1月3日、東京都出身。2002年W杯後にオランダへ移住し、'03年からドイツ在住。現地のフットボール熱をNumberほか多くの雑誌・新聞で伝えてきた。'09年2月1日には帰国し、海外での経験を活かした独自の視点で日本のサッカージャーナリズム界に新風を吹き込んでいる。著書に「2010年南アフリカW杯が危ない!」(角川SSC新書)、「サッカーの見方は1日で変えられる」(東洋経済新報社)がある。7月23日には最新刊となる「世界は日本サッカーをどう報じたか」(KKベストセラーズ)を上梓した。


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