那須大亮を軸とする磐田の4バックもようやく安定感を増してきた

FWから始めよ。
~ジュビロ磐田、復活の条件~

木崎伸也 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Shinya Kizaki

photograph by Masahiro Ura

FWから始めよ。~ジュビロ磐田、復活の条件~

関連アスリート・チーム:

チーム・選手名
ビセンテ・デルボスケ
那須 大亮
ジュビロ磐田
浦和レッズ

 デルボスケがスペイン代表監督に就任する直前、インタビューをした際に、こんな質問をぶつけたことがある。「いいチームを見分けるには、どこを見ればいいですか?」と。

 リビングに飾られた欧州チャンピオンズリーグの“ビッグイヤー”(優勝杯)のレプリカを前に、デルボスケはこう答えた。

「守備の始まりと、攻撃の始まりを見なさい。たとえばFWがどうやって守備をしているか、DFがどうやって攻撃を始めるかをね」

 ナビスコカップの浦和対磐田を見ていたら、ふとこのデルボスケの言葉が思い出された。

 特に「守備の始まり」という部分を。

 なぜなら、浦和が“守備の始まり”にこだわりを持っているのに対し、逆に磐田は“守備の終わり”にこだわりを持っていたからである。そして、その違いが、現時点での大きな成績の差になって表れていた。

ジュビロの4バックは、下味がいい加減なスープだ。

 この2チームには、共通点がある。昨季は3バックを採用していたが、今季は4バックに移行した――ということだ。

 磐田の4バックだけを見ていると、那須を中心に、いかにラインコントロールに力を注いでいるかがわかる。ボールが敵陣方向に動けば、ラインを上げる。相手が前を向いてボールを持てば、ラインを下げる。実に細かい。

 だが、悲しいかな、その動きが中盤から前の動きと連動していないのだ。まだ磐田は組織として発展途上で、どこからプレスをかけるかはっきりしていない。FWとMFが前に行き過ぎてしまったり、逆に行かなかったり。DFライン(=守備の終わり)が1、2メートルのラインコントロールをしても、前線があまりにも大雑把なので生かされていない。下味がいい加減なスープに、いくら隠し味を足しても限界がある。

似て非なるレッズとジュビロの4バック。

 一方、浦和は全く別のアプローチをしている。

 合宿中からDFラインの細かなコントロールは諦め、いかにFWやMFが前からプレスをかけられるか(=守備の始まり)に重点を置いてきた。意図的なラインの上げ下げはしないので、オフサイドを取ることはほとんどできないのだが、裏を取られるリスクは減らすことができる。その結果、1-0の完封勝利の連続。後方ではなく、前方のディティールから作り上げたことが功を奏した。最近ではDFラインにも余裕が生まれ、オフサイドを取れるようになってきた。

 両者のうち、現段階でより勝ち点を稼いでいるのはどちらか? リーグ戦で浦和は2位、磐田は9位。ナビスコ杯のA組で浦和は1位、磐田は敗退が決定した。4バック移行後、早く結果に結び付けられたのは浦和のほうである。

デルボスケの至言にジュビロ躍進のヒントが。

 FWイ・グノの加入後、磐田はJリーグで劇的に復活したが(ちなみにこの浦和戦は、イは代表戦のため不在)、シーズン序盤に苦しんだのは、守備の“始まり”と“終わり”の不整合に原因があったからだろう。4バックが安定してきた今、今度は前と後ろの守備を融合することが求められる。

「守備の始まりが大事」

 今後、磐田がさらに上を目指すためには、デルボスケの言葉がヒントになるのではないだろうか。

■関連リンク► 【18歳の履歴書】 超新星・山田直輝が照らすニッポンの未来。
► 日本のFWに、もっとフィジカルを。

(更新日:2009年6月7日)

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筆者プロフィール

木崎伸也

木崎伸也

1975年1月3日、東京都出身。2002年W杯後にオランダへ移住し、'03年からドイツ在住。現地のフットボール熱をNumberほか多くの雑誌・新聞で伝えてきた。'09年2月1日には帰国し、海外での経験を活かした独自の視点で日本のサッカージャーナリズム界に新風を吹き込んでいる。著書に「2010年南アフリカW杯が危ない!」(角川SSC新書)、「サッカーの見方は1日で変えられる」(東洋経済新報社)がある。7月23日には最新刊となる「世界は日本サッカーをどう報じたか」(KKベストセラーズ)を上梓した。


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