ヘアピン・カーブからの1000メートル。最終シケインまで続くジル・ビルヌーブ・サーキットで最も長いバックストレートしか、佐藤琢磨が王者たるF・アロンソのマクラーレン・メルセデスにしかけるところはなかった。
大荒れとなった第6戦カナダGP。ヘアピン・カーブでBMWのR・クビサが大クラッシュ、その後もアクシデントが多発しセーフティカーが4回も出動した。コース・コンディションは悪化し、半車身でもラインを外すとタイヤかすやホコリ、土などによってマシンのグリップが失われる状態になっていたのだ。
琢磨とスーパーアグリ・チームは、25・50・53周目にピットイン。セーフティカー出動のタイミングを上手く利用した。新レギュレーションによって義務付けられた2種類のタイヤを小刻みに使い分け、終盤はカーバランスがいいハード側タイヤをはいていたことも大きい。63周目時点で琢磨の前、7位にいたR・シューマッハも6位アロンソもソフト側タイヤだ。彼らの走りを見ていると、特にリア・タイヤのグリップが落ち、コーナー出口加速が鈍くなっているなと僕は感じた。もちろん背後につける琢磨は、はっきりと敵の弱点を察知していた。
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photograph by Hiroshi Kaneko