「世界を視野に、戦いの旅に出たい――」
プロゴルファー・青木功がそう決意したのは、'78年のことだった。
もちろん、それまでにも世界で戦った経験はある。でもそれは、日本の代表として、招待を受けて戦いに行くだけのものだった。
'78年のマスターズ。青木は1打差での予選落ちを喫した。最終ホールの最後のパットは、たとえ沈めても予選落ちの動かない1打だった。だが、その1打のことを、青木は酒を飲みながら、僕にしみじみと語ったのだ。
「俺は必死にあのパットを入れようと決めたんだ。これを外したら、この先の自分がなくなっちゃうような気がしたんだよ。俺は今、36歳。この歳になってやっと、棒(クラブ)を振っていることがゴルフじゃないって解りかけてきたんだ。ゴルフは技術だけでも勝てない。精神だけでも勝てない。言葉にすると簡単で、当たり前だけど、“心技体”が大切なんだね。ちょっと遅いかも知れないけど、でも一生、気がつかないよりいいよな……」
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