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「無理すんなよ」「ちょっとだけいいか?」交流戦7連敗の知られざる舞台裏と窮地を救ったリーダー2人の言動「もう一回、自分たちの野球をしようや」《湯浅、岩崎、坂本、糸原の証言》

2025/10/05
佐藤輝明の2ランなどでロッテに快勝。6月18日、連敗を7で止めた
結果的に今季唯一にして最大の窮地となった大型連敗。動揺はチーム全体に伝播する。この状況を変えたものは何だったのか――。当事者の証言で輪郭を浮かび上がらせる。(原題:[ドキュメント]そのとき投打のリーダーが動いた交流戦7連敗の舞台裏)

「えっ、自分ですか?」

 湯浅京己は思わず聞き返した。

 ベルーナドームの一塁側ブルペン。

 8回裏に本格化させていた投球練習をいったん切り上げ、ちょうどパイプ椅子に腰掛けたところだった。

「僕はあの時、9回はザキさんが行くものだと勝手に決めつけてしまったんです。それで座った時、ほんの少しだけ気を緩めてしまって……」

 右腕は今も後悔を消せずにいる。

 6月11日の敵地西武戦。試合は1-0のまま9回表の阪神の攻撃に入ろうとしていた。守護神の岩崎優がハイピッチで肩を作る中、ブルペンの電話が鳴った。

「湯浅、次行くよ!」

 慌てて準備を再開した。だが“野球の神様”は隙を見逃してくれなかった。

 この頃、岩崎は出場選手登録をされたまま、登板間隔を大きく空けていた。

 3、4月はチーム26試合中12試合、5月は25試合中11試合に登板。接戦続きで出番が増える中、チームはクローザーの疲労回復を最優先事項と考えていた。

 前回登板は12日前の5月30日。首脳陣は少しでも楽な展開で久々のマウンドに立たせたかったのだろう。

 一方の湯浅は4月29日の今季初登板から17試合連続無失点と勢いづいていた。

 しびれるセーブ機会にもかかわらず、守護神ではなく好調リリーバー。それは藤川球児監督ら首脳陣にとって熟慮の末の判断だった。ただ、当事者の多くはベンチの思惑を完全には読み切れていなかった。

 9回表。4番・佐藤輝明が18号ソロを放ち、リードは2点に広がった。

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photograph by KYODO

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