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【王貞治】「俺たちは勝つしかないんだ」ホークスの悲願を託された“世界の王”が号泣した夜…城島健司らが証言《若鷹軍団が見た「ONシリーズ」》

2025/07/26
20世紀のうちに、「ON対決」を実現させる――。これは福岡ダイエーホークス創設以来の悲願だった。そんな夢の決戦を終えたとき、王貞治は何を思ったか。鷹のフロント、コーチ、選手の視点から迫る。(原題:[ホークスから見たONシリーズ]2000 世界の王が号泣した夜)

 東京ドームはバックヤードの選手エリアからダグアウトに出るのに少し薄暗い階段を数段上らなければならない。20世紀最後の日本シリーズ開幕を翌日に控えた2000年10月20日、出場両チームが公式練習を行っていた。先に巨人が最終調整をし、入れ替わりでダイエーがグラウンドに現れる。強打の正捕手・城島健司は、前年とは違う落ち着きを感じながらロッカーを出て練習に向かおうとしていた。

「僕らは1999年に中日を倒して初の日本一になりました。ダイエーはリーグ優勝自体も初めて。何もかもが未体験の中でガムシャラに戦って勝ちました。でも、王(貞治)監督には言われていたんです。『連覇は、初優勝の100倍難しいんだ』と」

 ダイエーはそれでも、2年続けてパ・リーグを制した。日本シリーズの大舞台も経験済み。怖いものなど何もないはずだった。

 通路を進み選手サロンを通り抜けて、階段に足をかける。暗がりから次第に眩しいグラウンドの全景が目に飛び込んでくる。

 その時だった。城島は無形の圧を感じ、思わず仰け反った。

「メディアの数にたまがりました(九州の方言で〈非常に驚く〉の意)」

 ホームベースの後方に人の山ができていた。密集の中心ではダイエー・王貞治監督と巨人・長嶋茂雄監督が揃ってインタビューを受けているのがなんとなく分かった。

「多分、そうだろうなと。だって記者とかカメラマンが何重にも群がって、三塁ベンチの僕からは王監督も長嶋監督も姿が全く見えないんです。あれこそが僕の中のONシリーズ。ONの偉大さも、日本の全国民が待ち望んでいた戦いだというのも一発で分かりました。いまだに忘れられない光景です。僕はその後五輪もWBCもメジャーも経験しましたが、どんなビッグイベントよりも、取材陣の数が桁外れに多かったし、とんでもない熱気を帯びていました」

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photograph by Naoya Sanuki

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