
五月場所千穐楽。ここまで全勝の大の里を相手に完勝した一番には、意地とプライドが滲んでいた。何を言われようとも貫くのは、前に出て攻める相撲。2横綱が並び立つ七月場所を前に、胸中を訊いた。(原題:[先輩横綱が語る]豊昇龍「自分らしさは譲れない」)
満員御礼の両国国技館が、一瞬の静寂に包まれた。2025年五月場所、千秋楽結びの一番。綱取りに挑み、ここまで全勝ですでに優勝を決めた大関・大の里と、三月場所で先に横綱に昇進した豊昇龍との対戦だ。
立行司・木村庄之助の軍配が返り、立ち合い。頭で低く鋭く当たった豊昇龍を、大の里がもろ手突きで受け止める。弓なりになりながらも堪えた豊昇龍。すぐに右を差し、同時に左上手はがっちりと浅めに捉えた。右の下手を探りながら前に出る大の里。しかし、豊昇龍が驚異のスピードで回り込み、しっかりつかんだ左上手を土俵にたたきつけるようにして、大の里の巨体を転がした。横綱の意地を見せた豊昇龍。土つかずの大の里を倒し、全勝を阻んだ瞬間だった。
「ただいまの決まり手は、上手ひねり、上手ひねりで、豊昇龍の勝ち」――。
新横綱・大の里の誕生に祝福ムードが漂うなか、先輩横綱の豊昇龍の意地の白星は、見る者の胸を打った。
豊昇龍智勝。1999年、モンゴル・ウランバートル生まれの26歳は、言わずと知れた元横綱の朝青龍を叔父にもつ、格闘技一家に生まれた。幼い頃から格闘技へのあこがれがあり、5歳から柔道、11歳からレスリングに取り組んだ。
レスリングで2020東京オリンピックを目指すため、高校から日本の柏日体高校(現・日本体育大学柏高校)へ進学。レスリング部へ入部したが、1年生のときに初めて国技館へ大相撲を見に行ったことで、人生が大きく動いた。
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photograph by Kiichi Matsumoto / JMPA
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