#1122
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「閉鎖的なF1村の文化と慣習を一変させた」レッドブルの速さだけではない“戦略”を読み解く「予算管理は実に厳格で、日常的な評価や査定も…」

これまでに2度の黄金時代を築き上げ、今やF1界の顔とも呼べる存在にまで飛躍を遂げたレッドブル・レーシング。大手自動車メーカーが名を連ねる格式高い文化圏において、後発のエナジードリンクメーカーが隆盛を極めた要因は何なのか。その参入から成功までの歩みを、多角的な視点で分析する。(原題:[チーム多角分析]F1に翼を授けたレッドブルのエナジー戦略)

「角田裕毅、レーシングブルズからレッドブルのドライバーに昇格」

 時ならぬ一報に、日本中が沸き立ったのは無理もない。レッドブルは2010年頃からF1の強豪チームに成長。2度の黄金時代を築いただけでなく、F1が今日のようなホットなエンターテインメントに変貌する、トレンドセッターの役割も果たしてきた。そんなチームに日本人ドライバーが名を連ねるのは、まさに快挙だった。

 ならばレッドブルは、なぜかくもスペシャルな存在になったのか。まず挙げられるのは潤沢な資金力とユニークな発想、アイデアをすぐに実践する行動力だ。

 レッドブルF1チームは'04年、ジャガーチームの買収で誕生したが、当初は真意を測りかねると指摘する声もあった。

 むろん参戦の目的は、自社製品のブランディングとマーケティングにある。同社はエクストリーム系からサッカーにいたるまで、ありとあらゆるスポーツでスポンサーシップを展開。「挑戦」「アドレナリン」「ライフスタイル」といったキーワードを絡めながら、年間販売本数126億7000万本、売上約1兆7900億円(2024年度)を誇るエナジードリンクを世界中でPRしてきた。しかし精力的、かつ多岐にわたる支援活動の故に、F1の活動も資金力を背景にした販促施策の一環に過ぎないのではないかと受け止められたのである。

極めて異例な2チーム運用を開始

 ところが彼らは本気だった。参戦初年度の'05年、コンストラクターズランキングを7位で終えたレッドブルは、チームの技術的な基盤を強化するために、デザイナーのエイドリアン・ニューウェイをマクラーレンから招聘。若手のドライバーに経験を積ませるべく、ミナルディも買収して「スクーデリア・トロロッソ(現・レーシングブルズ)」と名付け、極めて異例な2チーム運用を開始した。

会員になると続きをお読みいただけます。
続きの内容は…
オリジナル動画も見放題、
会員サービスの詳細はこちら
特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Takeshi Nakamura(Illustration)

0

0

0

この連載の記事を読む

もっと見る
関連
記事