ダービー6勝の武豊騎手が大外18番枠から注文をつけて、サトノシャイニングが一気にハナへ行った。最初から決めていたかのような迷いのない動きで、1コーナー手前という早い時点で主導権はあっさり武のものとなった。「スタートさえ決まれば、こう乗ろうと考えていました。枠が枠なので、中途半端ではいけませんから」と、そこは史上最多となる36回目のダービー出場経験から導き出された、言われてみればなるほどの作戦。東京競馬場に駆けつけた約8万人の大観衆は、一瞬「オッ」と息を呑んだあと、すぐに納得させられた。

しかし、レジェンドが用意した筋書きであってもそこに簡単に収まらないのが、頂点の戦いらしい激しさだった。おそらく、そちらもレース前から決めていた作戦だったのだろう。田辺裕信騎乗のホウオウアートマンが、1コーナー過ぎで18番のゼッケンのさらに外をかすめるように並びかけると、そのまま思い切りよく先頭に行ってしまったのだ。
百戦錬磨の武だけにこの展開も当然読みの範疇に入っていたはずで、2番手に落ち着く形になったとしても、いわゆる“プランB”として悪くない運びと考えていただろう。しかし武は微妙な誤算を口にして、悔しそうな表情を見せた。「外から並ばれたときに、ほんの少しだけど無駄にエキサイトさせられた。それが最後に響いた」と言うのだ。事実、ゴール前400m付近で先頭に立ったサトノシャイニングだったが、勝ち馬に並ばれたときには抵抗する力をすでに削がれていて、最後は4着に後退。すんなりの逃げだったら、もっと粘れていたのかもしれない。
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