#966
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《最終章を見つめて》ラストプログラム『人間の条件』は町田樹の人生そのものだった…氷上の哲学者は「愛するもののために」<アーカイブ記事/2019年>

氷上の哲学者・町田樹が、10月6日、フィギュアスケーターとしての活動に終止符を打った。独特な個性で存在感を発揮し続けたアーティストは、今後“継承者”として愛するスケートを支える。(初出:Number966号 [新たなる旅立ち]町田樹「愛するフィギュアスケートのために」)

 最後の日から、1カ月と半月あまりが過ぎた。時とともに薄れゆくはずの記憶は、ますます鮮明となり、よみがえってくる。

 10月6日、町田樹は、「ジャパン・オープン」で『そこに音楽がある限り』を披露し、続いて行われた「カーニバル・オン・アイス」での演技を最後に、氷上を去った。

 プログラムのタイトルは『人間の条件』。

 それは、まさにラストにふさわしいプログラムだった。そして町田樹の、まぎれもない集大成だった。

 町田は2014年12月、全日本選手権で電撃的に競技生活からの引退を発表。その翌年から大学院でスポーツのマネジメントについて学ぶとともに、プロフィギュアスケーターとして活動してきた。

 その年月は、抱えてきた悩みを克服するための時間でもあった。

「現役時代、町田樹-フィギュアスケート≒(ニアリーイコール)ゼロ。そこで葛藤を感じていたわけです」

 それはフィギュアスケートが町田のアイデンティティであることを意味していたが、一方で、フィギュアスケートしか知らない自分でいいのか、という懸念と、それでは駄目だという思いがあった。

 だからバレエなど他の表現ジャンルを幅広く知り、さらに知見を深く広げようと努め、勉強に勤しんだ。その日々をこのように表現する。

「町田樹-フィギュアスケート=、その先の数字をより大きくしようと努力を積んできました」

 研鑽で得られた成果を発表する場が、アイスショーであった。そこでは競技生活では不可能だったプログラムを披露し続けた。

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photograph by Asami Enomoto

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