#966
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「…先生、ちょっと話があるんだけど」高橋大輔32歳、リンク復帰への“知られざる道程”とは?<アーカイブ記事/2019年>

日本男子フィギュア初の五輪メダリストが、4年ぶりに真剣勝負のリンクに戻ってきた。ボロボロの演技で苦笑いを浮かべた復帰初戦、円熟ぶりとフレッシュさが同居した2戦目。コーチの視線を交え、帰還の軌跡を辿った。(初出:Number966号 [5年ぶりの全日本へ]高橋大輔「32歳、希望のリンクで」)

 4年間、忘れていた感動が蘇る。体も心も、音楽に溶け込んでいくような演技。フワッと身体が浮くようなトリプルアクセル。そして以前よりも重みのあるスケーティングと、全身からみなぎる情熱。本当に、高橋大輔が戻ってきたのだ。

 最後のコレオシークエンスではつまずいたものの、気迫で踏ん張って演技の一部のように見せるアドリブも。演技を終えた瞬間、「きつい」と苦笑いし、太腿を叩いた。

 11月4日、名古屋の日本ガイシアリーナ。現役復帰から2戦目となった高橋が新境地を見せた4分間だった。

長光歌子の家では、大みそか恒例の年越しの会が開かれていた

 高橋の第2章の幕開けは、まさに2018年の年明けだった。長光歌子の家では、大みそか恒例の年越しの会が開かれていた。親しいスケート関係者でカウントダウンを終え、新年の挨拶をしていると、高橋がこう言った。

「……先生、ちょっと話があるんだけど」

「なに大輔?」

「僕、現役復帰したいと思うんです」

「え、そうなの。いいわね。やろうやろう」

 酔いも回っていた長光は二つ返事で応える。高橋は、あまりに軽い返事に拍子抜けしたという。

 だが、この復帰は2人が次なる人生を歩むために不可欠な「架け橋」だった。

 高橋が引退をしたのは、ソチ五輪シーズン終了後の'14年秋のことだ。だが、その最後のシーズンは、痛みに耐え、それでも力を出し尽くそうとする、戦いの1年だった。

 '13年11月、練習中に古傷を抱える右膝を負傷。ドクターストップを振り切って全日本選手権に出て、五輪出場権を獲得したが怪我は悪化した。長光が当時を振り返る。

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photograph by Takuya Sugiyama

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