
4年間、忘れていた感動が蘇る。体も心も、音楽に溶け込んでいくような演技。フワッと身体が浮くようなトリプルアクセル。そして以前よりも重みのあるスケーティングと、全身からみなぎる情熱。本当に、高橋大輔が戻ってきたのだ。
最後のコレオシークエンスではつまずいたものの、気迫で踏ん張って演技の一部のように見せるアドリブも。演技を終えた瞬間、「きつい」と苦笑いし、太腿を叩いた。
11月4日、名古屋の日本ガイシアリーナ。現役復帰から2戦目となった高橋が新境地を見せた4分間だった。
長光歌子の家では、大みそか恒例の年越しの会が開かれていた
高橋の第2章の幕開けは、まさに2018年の年明けだった。長光歌子の家では、大みそか恒例の年越しの会が開かれていた。親しいスケート関係者でカウントダウンを終え、新年の挨拶をしていると、高橋がこう言った。
「……先生、ちょっと話があるんだけど」
「なに大輔?」
「僕、現役復帰したいと思うんです」
「え、そうなの。いいわね。やろうやろう」
酔いも回っていた長光は二つ返事で応える。高橋は、あまりに軽い返事に拍子抜けしたという。
だが、この復帰は2人が次なる人生を歩むために不可欠な「架け橋」だった。
高橋が引退をしたのは、ソチ五輪シーズン終了後の'14年秋のことだ。だが、その最後のシーズンは、痛みに耐え、それでも力を出し尽くそうとする、戦いの1年だった。
'13年11月、練習中に古傷を抱える右膝を負傷。ドクターストップを振り切って全日本選手権に出て、五輪出場権を獲得したが怪我は悪化した。長光が当時を振り返る。
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