
青森県東北町、荒谷牧場。ここに2011年のダービー2着馬ウインバリアシオンがいる。場長の荒谷栄一さんに引かれて馬房から出てきたウインバリアシオンは背が高く、雄大な馬体をしていた。体高は173cmもあるという。
「日本でいちばん大きい種馬です。キタサンブラックよりも1cm高い」
誇らしげに言うのは、ウインバリアシオンを所有するスプリングファーム(青森県十和田市)の佐々木拓也さんである。
ウインバリアシオンが青森にきたのは'15年の春だった。天皇賞12着のあと左前脚の浅屈腱不全断裂を発症、競走馬生命を失った。翌日、「引退して種牡馬になる予定で、繋養先は未定」とJRAから発表された。この報道に飛びついたのが佐々木さんたち青森県軽種馬生産農協青年部だった。

戦後、青森は日本の競走馬生産の中心地だった。1957年から'59年の3年連続を含め、7頭のダービー馬が青森から誕生している。その青森の馬産はいま、見る影もなく衰退してしまった。ヒカルメイジなど2頭のダービー馬を出した盛田牧場、'62年のダービー馬フエアーウインの浜中牧場も閉鎖を余儀なくされた。最盛期には200を超えていた牧場は2024年現在で28まで減り、登録された繁殖牝馬は136頭(うちアラブ2頭)、種牡馬は11頭である。
「どうしたら青森の馬産を復興できるか」
軽種馬生産農協青年部のメンバーが話し合って出た答えが新種牡馬の導入だった。佐々木さんは言う。
プラン紹介

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
この連載の記事を読む
記事