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【秘話】「バナナシュートは神様の合図で」“得点王”3人が語るヒーローとしての高校サッカー選手権《証言:サントス(東海大一)、江原(武南)、片桐(岐阜工)》
2025/01/11
かつて、選手権の舞台からは数々のスターが登場した。高校サッカーの枠を越えたヒーローも生まれた。彼らにとって、選手権とはどのような意味を持つのか。とりわけ印象的な3人の得点王を訪ねた。(原題:アデミール・サントス(東海大一)江原淳史(武南)片桐淳至(岐阜工)「得点王が辿った道」)
アデミール・サントスの選手権
百年の歴史を誇る冬の選手権には、記憶に残る伝説のゴールがある。中でも1986年度、東海大一に初出場初優勝をもたらしたアデミール・サントスのフリーキックは、不朽の名作として語り継がれる。
ブラジル出身のサントスは幼いころに父を亡くし、兄が入院中に命を落とすという過酷な少年時代を過ごした。学校とサッカーを掛け持ちしながら、溶接、くつ磨き、アイスクリーム売りなどなんでもやった。
ジュベントスに所属していた14歳のとき、彼は日本人留学生と運命の出会いを果たす。その名は三浦知良。ラッツ&スターのヒット曲「め組のひと」を、いつも口ずさんでいた。サントスは17歳の若さで日本に渡るが、仲介をしたのはカズの父である。
日本には想像を絶する厳しさの「部活サッカー」が待っていた。
「めちゃくちゃきつい練習をした翌日に2試合やって、終わると窮屈なマイクロバスで長時間移動。信じられなかったよ」
東海大一の“チーズとネズミ”大作戦
1年目の選手権は、静岡県予選決勝でPK戦負け。外したのはサントス。この試合に勝った清水商が、日本一になった。
翌年度、東海大一は県予選を勝ち抜き、初の全国へ。4試合連続3-0という快進撃で、決勝に勝ち進む。その攻撃力を支えたのが、“チーズとネズミ”大作戦だった。
「ぼくは監督に自由に動いていいと言われていた。相手がぼくを厳しくマークすれば、フリーの味方を使う。そう、ぼくはネズミを集めるチーズになったんだ。マークが分散したら、今度は自分が決めればいい」
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photograph by Bungeishunju