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「ユタカは洋一に重なるところがある」柴田政人が語る“神騎乗”の本質《レジェンドが「やっぱり凄い」と称賛する現役騎手は?》

2024/10/24
'93年、柴田はウイニングチケット(黄帽)に騎乗し19回目の挑戦でダービー初制覇
我々が競馬場で、あるいは画面を通して目の当たりにする超人的な騎乗はいかにして生み出されるのか。20世紀の日本競馬を牽引した柴田政人とともに名手の系譜を辿って見えてきた、その実相とは。(原題:[柴田政人に訊く]神騎乗とは何か)

 騎手の視点から見たとき、「神騎乗」とは具体的にどんな騎乗なのか――。

 名手と呼ばれる騎手は様々なスキルをあわせ持っている。柴田政人さんはそのひとつに「レースを感じる力」を挙げる。

「ゲートを出た後、『このレースはどんな風に流れているのか』ということを早くに掴まえるのはとても大事。そして自分の馬の脚質にあわせて“この流れならここ”というポジションを取る。ぼやぼやしていたら他の馬に先に入られちゃうからね」

 欲しかった位置を首尾よく確保できたとしても、安穏とはしていられない。相手はどの馬か。どこにいたら前が詰まり、どこを突けばスペースが開くのか。進路の選択、仕掛けのタイミングに加え、「生き物」だというレースでは突発的な事態もしばしば起きる。刻々と移り変わる戦況のなか、的確な判断を瞬時に、次々と下していかなければならない。

「コース取りとかはレースの流れのなかで判断することだけど、その局面になってからではもう遅い。ここにいたらマズい、いや、あそこは開きそうだということを、乗りながらイメージしておかないと。それとやっぱり、自分の馬はもちろん、相手の力や特徴も頭にインプットした状態で競馬をしないとダメだよね」

 早くに先頭に立つと気を抜くから、仕掛けのタイミングを計る。併せる形になるとしぶとい馬が相手なら離れた外から追い込む。「この人の後ろにいても絶対に内を開けてくれない」といったライバル騎手の癖、さらには血統的な特徴まで頭に入れて彼はレースに臨んでいたという。

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photograph by Tomohiko Hayashi / Takuya Sugiyama

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