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「チームを回せる“油”になりたい」虎の4番・大山悠輔を変えた恩師・金本知憲の言葉とは?<2024年は元日からトレーニング>

2024/03/28
2023年は全試合で4番スタメン出場。四球数と出塁率はリーグトップだった
タイガース日本一の立役者となった不動の4番。だが充足することはなく、元日から練習に励み、大物OBに教えを請う。寡黙な主砲が内に秘める連覇に向けた覚悟、自身に課した役割とは――。

 大山悠輔は正月早々、いても立ってもいられず自宅を飛び出した。

 2024年1月1日の昼すぎ。

「ちょっと出てくるわ」

 小雨上がりの日差しには目もくれず、重厚な愛車を走らせる。

 少しだけ後ろ髪を引かれながら、愛妻、愛猫2匹との貴重な家族だんらんを一時中断。向かった先は兵庫県芦屋市内のトレーニングジムだ。

「どれだけ練習しても『結果を残せるのかな』と不安が消えることはない。もう、終わってから『ああしとけば良かった』と後悔したくないんです」

 元阪神トレーナーのジム経営者もさすがに休日を取っている。鍵を借り、貸切状態で2時間近く全身をいじめ抜いた。

 例年にない元日始動。

 主砲は年明け早々から危機感に駆られていた。

 昨季は不動の4番として阪神を18年ぶりのセ・リーグ制覇、38年ぶりの日本一に導いた。少しぐらい余韻に浸り続けてもバチは当たらないはずなのに、切り替えは驚くほど早かった。

「試合だって、10-0で勝っても次の日はまた0-0から始まるじゃないですか。去年は優勝しましたけど、その年はその年でもう終わりですから」

 昨年12月は優勝旅行期間に練習量が落ちると見越して、今までにないほど体を追い込んだ。全身筋肉痛のまま空路ハワイへ。スポーツ紙の絵作り撮影で両手にパイナップルを持たされた際は「腕がバキバキで上がらなくて大変でした」。そんな努力家の尻にさらに火をつけたのがタイガース入団時の監督、金本知憲だった。

「おまえ、体まだまだやな」

 12月末の某日。大山は久々に金本と食事を共にした。大阪市内に集まったメンバーは大先輩の糸井嘉男にドラフト同期の糸原健斗、同学年の北條史也だ。阪神を退団して今季から社会人野球に飛び込む北條の「プロお疲れさま会」。肉に舌鼓を打ちつつ、恩師から切り出された言葉にグサッと胸を突き刺された。

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photograph by Kiichi Matsumoto
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