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【イチローの継承者】MLB屈指の安打製造機ビシェット&アラエスは、なぜデータを無視するのか?「野球の細かさにこだわりたい」

2024/03/08
ホームラン全盛の現代メジャーリーグにおいて、イチローを信奉してヒットを積み重ねる強打者もいる。共通するのは「数値」ではなく「数字」を追いかけること。独特の練習法を持つ二人に、その理由を訊いた。

「僕はまったく興味がないから、自分の打球の数値を計測しないんだよ」

 現代のメジャーリーグでは次々に新たなテクノロジーが開発され、打球の初速や角度などのデータを測定するのが当たり前になっている。ところが、トロント・ブルージェイズのボー・ビシェットはこのように驚きの発言をした。

バッティングがうまくなりたいから、データを参考にしない。

 ビシェットの父ダンテは1995年にホームラン王と打点王の二冠を獲得した強打者で、ボー自身も26歳にして2度のオールスター出場と2度のア・リーグ最多安打を誇る。昨季は打率.306を記録し、大谷翔平を上回ってア・リーグ3位につけた。そんなメジャー屈指の強打の遊撃手は、現代の風潮が自身の目指すバッティングに合わないと考えている。

「スカウティングのツールとしては、データが参考になるかもしれないけれど、選手にとって野球がうまくなるために必要かと言われれば、それは違うと思う。もっと野球そのものを研究するべきで、失敗の多い競技だからこそ、同じ失敗を喫してきた経験者から、実際にゲーム中に起こりうることを教えてもらった方が効果的じゃないかな。僕は自分をスカウティングしたいのではなく、バッティングがうまくなりたいから、データを参考にしないんだ」

Yukihito Taguchi
Yukihito Taguchi

 そんなビシェットが毎年設定している目標は、「シーズン200安打と首位打者」だ。特に200安打は、憧れのイチローが10年連続で達成していることから強く意識している。まだ達成したことはないが、惜しいところまでは何度も行った。初めてフルシーズン出場した2021年は191安打、翌'22年は189安打だった。そして昨季、開幕から好調を維持して7月31日時点で年間212安打ペースに乗せていたが、膝と大腿四頭筋の負傷で26試合も欠場を強いられ、175安打に留まった。目標達成のチャンスを逃したビシェットにとっては悔しい出来事だった。

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photograph by Yukihito Taguchi

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