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「スケートはいつまでも続けられない」ネイサン・チェンが“絶対に後悔しない演技”でつかんだ世界3連覇<独占インタビュー/2021年>
2024/02/28
今季3戦3勝。そのすべてが、圧勝だった。未曾有のパンデミックの中、戦いを終えた世界王者が激動と感謝のシーズンを振り返り、自らの無類の強さの“ルーツ”にも言及した。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2020-2021シーズン総集編 [世界3連覇王者の回想]ネイサン・チェン「競えたことに感謝の気持ちを」)
ストックホルム世界選手権で3度目の世界タイトルを手にした21歳のネイサン・チェン。ショートでは冒頭の4回転ルッツで転倒する珍しいミスが出て、前半3位という予想外の滑り出しだった。だが本人にとって、決してマイナスなスタートではなかったと明かす。
「正直に言うとショートの後、1位ではないという状況に、ちょっとほっとした気持ちがあったんです」
試合終了後、チェンは穏やかな表情でこう語りはじめた。2018年平昌五輪のショートで失敗し総合5位に終わって以降、ショートを終えた時点でトップを逃したのは、'18年秋のフランス杯(3位)以来だった。
「試合では毎回、勝たなくてはという気持ちにとらわれないよう気をつけています。でもショートで1位だと、どうしてもこのポジションを失いたくない、という気持ちが出てしまう。3位だったことで、今のままでもいいけれど、もっと上にいくチャンスもある、という楽な気持ちになれたんです」
自分の気持ちをうまく表現できるかわからないけれど、と言いながら言葉を続けた。
「ライバルの選手たちがどれほど高い能力を備えているかは、もちろんわかっていました。ちょっと矛盾しているかもしれないけれど、たとえ自分が良い演技ができなくても、誰かがやってくれるだろう、とわかっていた。だからもう勝ち負けにこだわらずに、この場にいることを楽しみながら自分のできることをやろう、と吹っ切れたんです」
「後悔しない演技」をすることに集中し、実力を発揮。
その後のフリーで、チェンは5度の4回転ジャンプを決めた。最後までノーミスで滑り切って逆転優勝を果たし、タイトルを守った。
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photograph by Asami Enomoto