気が気でない年の瀬だった。Jリーグのシーズンが終わっても、のんびり休む気分にはなれなかった。オフは当初の2週間から10日間に自ら短縮。12月中旬には所属するセレッソ大阪のフィジカルコーチのもと、大阪市内の練習場で体を動かし始めた。毎熊晟矢が日本代表に招集されるのは5度目。新たな右サイドバックとして台頭し、Jリーグのベストイレブンにも初選出。いまや代表の常連になりつつあるが、本人は首を大きく横に振る。
「周りによく言われるのですが、代表に定着しているとは思っていません。代わりはいくらでもいるので。まだ代えの利かない選手にはなっていないです。もっとアピールしないと生き残れないと思っています」
ずっと目指してきた場所は、たどり着いてから本当の勝負が始まる。あれから4年。『立ち位置』は変化した。コロナ禍に見舞われる前の2020年1月、プロ1年目の毎熊はJ2のV・ファーレン長崎で開幕スタメンに向けて、意欲を燃やしていた。東福岡高校、桃山学院大学時代は主にFWでプレーしてきたが、攻撃的なポジションであれば、こだわりはなかった。沖縄キャンプでは、最初の練習試合で左サイドハーフとして起用され、持ち味を発揮する。
「2点決めたので手応えはあったのですが、2試合目の前日に当時の手倉森誠監督から『とりあえず、あした右サイドバックをやってみて』と言われて……。チーム事情でFWの選手に順番にやらせるからと。でも、『なんで、俺なんだろ』と思いました。プロは結果の世界だと思って入ってきましたから。サイドバックは一度も経験がなかったですし、正直、最初は嫌でした」
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