昨季学生三大駅伝の全てで勝利し、第100回大会も圧倒的本命と目される駒大。名将・大八木弘明からバトンを受け取った新米監督が、この1年で選手たちに伝えたメッセージ、そして常勝軍団を率いる覚悟とは。
「いや、びっくりしましたよ。辞めるかもしれないとは聞いていましたが、はっきりとは伝えられていませんでしたからね。このタイミングなのか、という感じでした」
2023年、1月4日。前回の箱根駅伝の翌日に駒澤大学陸上競技部の寮を訪ねると、藤田敦史はいまだに信じられないといった表情で、こう話してくれた。前日の優勝記者会見が終了した直後、監督の大八木弘明はおもむろにマイクを取り直し、「私ごとなんですけど、今年で監督を退きます」と発言、後任に藤田を指名した。大会直前にその可能性をほのめかす会話が2人の間であったことは事実だが、いきなり公にされるとは予想していなかったと笑った。
とはいえ藤田が後を継ぐことは既定路線だった。大八木が駒大コーチに就任した1995年に入学した1期生で、卒業後も駒大を練習拠点にしていた時期もある。'15年からはコーチとしてチームも見ており、大八木も後継者として、彼の名をよく口にしていた。本人も近年は「その時」に備え、頭の中でシミュレーションをしていたことを認めている。
「三冠」ではなく「昨年度のチームに挑戦」
大学駅伝三冠を果たしたチームを引き継ぎ、選手たちが掲げた目標は再度の三冠。2年連続でのグランドスラムはかつてどの大学も成し遂げていない偉業だ。いきなり前人未到の領域を目指す形となったが、それも当然だろう。前年度の大学駅伝を走ったメンバー12人のうち、9名が残る。戦力は依然強力で、前年を下回る目標設定はあり得なかった。
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photograph by Shunsuke Mizukami