#1086
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《バスケ日本代表》ベネズエラ戦、7分18秒の真実…「信じていますか?」トム・ホーバスに問われ続けた比江島慎と川真田紘也

バスケットボールW杯ベネズエラ戦、勝利をして喜ぶ渡辺雄太ら日本代表
8月31日。悲願の五輪切符を掴むまで、あと2勝――。必勝を誓って臨んだ決戦は、終盤を迎えてなお劣勢。だが、逆襲の予感は静かに、アリーナを満たしていた。日本代表があの一戦で問われたもの。その核心に迫る。

 沖縄アリーナは熱を失っていなかった。試合時間が残り8分を切った時点で、日本代表のビハインドは15点にまで広がっていた。相手は格上のベネズエラ。バスケットボールのセオリーに照らせば、勝利の可能性は限りなく低い状況だ。それでもアシスタントコーチの佐々宜央は自分も含めて、ベンチにも場内にもまったく諦めのムードがないことを感じていた。

《1次ラウンドからそうでしたが、第4クオーターになると、明らかに相手がバテていたんです。だから走り切れば絶対に勝負できるとベンチでも話していました》

 予感の根拠としては自分たちのバスケットボールに対する手ごたえがあったが、もうひとつ、このチームがずっと自分たちに問い続けてきた魔法のような言葉――そのためであるのかもしれなかった。

「信じていますか?」トム・ホーバスは全員に問い続けた。

 信じていますか?

 6月、東京都内のナショナルトレーニングセンターで始まった強化合宿初日、ヘッドコーチのトム・ホーバスは全員をコート中央に集めると、一人一人に問うた。

「あなたはこのチームで勝てると、オリンピックにいけると信じていますか?」

 アメリカ・コロラド生まれの指導者は相手の眼球を覗き込んだ。問われた者はその目を見て答えた。「信じています」

 問いは選手のみならず、スタッフにも及んだ。そしてチームが苦境や節目を迎えるたびにその問いは繰り返された。

JIJI PRESS
JIJI PRESS

《トムは日本語の選択がとても上手で、日本人である僕も学ぶことがたくさんあります。必要最低限の日本語しか言わないから言葉が強い。シンプルでスッと心に入ってくる。信じているかと訊かれ、おそらく「大丈夫かな……」と思っている選手もいたと思うんです。でも信じ込ませる。信じていると言わせる。言葉にしたからには責任を持たないといけないですから》

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photograph by AFLO
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