赤いユニフォームが、少々窮屈そうだ。
「今90kgちょいですね。ベストは88とか89kg、試合が始まれば落ちるから、大会前の現段階だとちょうどいい感じです」
西田有志が初めて男子バレー日本代表に選出された2018年。18歳になったばかりの当時を彼は「常にフワフワしていた」と笑う。体重は80kg、今より細身で見た目も幼かった。「早くデカくなりたい」と焦燥感に駆られ、がむしゃらにウェイトトレーニングに励んだ結果、バランスが整う前にケガが頻発した。
それから4年。高校を卒業したばかりだった少年は世界選手権、ワールドカップに出場し、'19年にはプロ選手となった。
「結果がすべての世界。あれも食べたい、これも食べたいとか思うけど、食事にも気を遣いますよね。結局、身体がちゃんとしていないと戦えないですから」
逞しさを増したのは腕や胸板だけでない。言動も変わった。
「そりゃ人間変わりますよ。あれだけの経験をさせてもらった。言うなら、今見る景色を、見ちゃったわけですから」
西田の言う“あれだけの経験”が指すもの。それは昨夏、日本代表が29年ぶりにベスト8進出を果たした東京五輪だ。
ただ出ることを目標にするのではなく、ベスト8という明確な目標を立てて挑んだ大舞台。勝てば準々決勝進出が決まる予選グループリーグでのイランとのフルセットに及んだ最終戦は「あんなにギラギラして、アドレナリンが出まくった試合は今までなかった」と振り返るほど。サーブをどこに打つか、相手の攻撃をどう防ぎ自チームの得点につなげるか。時に緻密、あるいは大胆に繰り広げられる駆け引きの1つ1つが、楽しくて仕方がなかった。
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