生きの良い虎のルーキーは野手だけにとどまらない。甲子園デビューの巨人戦で初勝利、そして3連勝。しかし、好調に浮かれる素振りは微塵も見せない。ただただ冷静に、自らの課題と向き合っていた。(初出:Number1029号[先発ローテを支える25歳]伊藤将司「新人左腕は淡々と、堂々と」)
誰やねん……。
4月7日、ルーキーの伊藤将司がプロ2戦目の先発マウンドに上がった時、ほんとのところ、甲子園球場に詰めかけたタイガースファンの思いはこんな感じではなかったろうか。
千葉で生まれ育ち、名門・横浜高に進み、千葉・勝浦の国際武道大から、社会人野球はJR東日本。高校時代からいつも主戦級でマウンドに上がっていたとはいえ、そのキャリアにおいて「関西」との接点はほとんどなかった。たとえドラフト2位の即戦力左腕というふれ込みでも、ファンの間では「大丈夫かいな……」と、様子をうかがうムードが支配的だったと地元の記者も証言している。
その地元デビュー戦で宿敵・巨人を7回1失点にピシャリと抑えて、立て続けの3連勝。その後も試合後半までしっかりゲームを作る安定したピッチングを続けて、快調にセ・リーグ首位をひた走る阪神のローテーションの一角を担って立つ。
「ここまでは、なんとかいい手応えで来てますけど、野球のレベルは高いし、打者のオーラもすごいんで、なるべく緊張を表に出さないように……スピードのある投手は目立ちますけど、自分の場合は、緩急とコントロールで勝負するプレースタイルだと割り切っているので」
首位独走チームのローテーションの一角という重責を担うわりには、伊藤本人は至ってフラットで、高ぶったところは伝わってこない。
「なるべく打者のタイミングを外すようにして、自分の調子がいまいちだなって時は、いつも以上に、丁寧に、慎重に、投げることを心掛けています。力んでコントロールを失って自滅するのが、一番よくないと思ってますから」
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photograph by Hiroshi Nakamura