#834
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<2010年、沖縄の熱き夏>島袋洋奨と宮國椋丞、好敵手が交わったマウンドの思い出【クロスインタビュー】

2023/09/02
興南は甲子園春夏連覇を成し遂げた'10年、沖縄県大会決勝で、最大の難敵と対峙していた。夢をかけて投げ合った両エースが、決戦の内実と胸に抱き続けてきた互いへの想いを明かす。(初出:Number834号[好敵手クロスインタビュー(2)]「沖縄発、贅沢な競演」)

 去年の暮れ、東京の郊外にある沖縄料理の店に7、8人の若者が集まっていた。沖縄訛りの彼らは、チャンプルーやらタコライス、エンダーのポテトやらオリオンビールをしこたま頼んで、昔話に花を咲かせる。話題の中心は、野球―彼らは3年前の夏、沖縄県大会の決勝戦で甲子園を懸けて戦った、二つの高校の同学年の仲間たちだ。

 その中に一人、甲子園のヒーローがいた。

 その中に一人、プロ野球選手がいた。

 甲子園のヒーローは2010年の甲子園で春夏連覇を成し遂げた興南高校のOB、中央大学の島袋洋奨。

 プロ野球選手は今シーズン、プロ3年目にしてジャイアンツの開幕投手を務めた、糸満高校のOB、宮國椋丞。

 東京に出てきている糸満の野球部、興南の野球部の何人かが集まって開かれたささやかな飲み会で、島袋と宮國は、東京に出てきてから初めて会うことができた。

 その日のことを宮國はこう語った。

「アイツ(島袋)のことは頻繁に思い出してますよ。大学でケガもしてましたし、大丈夫かなって。高校の頃からずっとメールのやりとりはしてるんです。でも、なかなか会う機会がなくて……あの日の僕は門限があったので、帰りたくなかったけど先に帰りました」

 一方の島袋は、久しぶりに会った宮國について、こう話した。

「アイツがおごってくれたんですけど、そのおごり方がカッコよくて……宮國は門限があるからって、帰り際、みんなの分も払ってくれたんです。自分らはその後も飲んでたんですけど、デザートが出てきて……お店の人に訊いたら『先程の方が、デザートの分もお支払いになりました』って。おい、マジか、さすがだなって。ステージ、違いますよね。違いすぎてライバル意識も持てない(笑)」

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photograph by Hiroki Nakashima

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