河村勇輝擁する絶対王者・福岡第一を追い詰めたのは、生粋のスコアラー富永啓生が率いる桜丘だった。日本バスケの未来はこの時から、明るく照らされていた。
48-46。
ウインターカップ2018男子準決勝第1試合、桜丘対福岡第一。前半を終えた会場内には異様なざわめきが充満していた。
今大会ダントツの優勝候補で、ここまでの3試合すべてを20点差以上開けて勝ってきた福岡第一が、初めてリードを奪われている。そして、そのリードの奪われ方は実に奇想天外なものだった。
福岡第一は、桜丘に献上した48点のうち31点を1人の選手に取られた。ゴール至近距離でアドバンテージを作れる長身留学生だったらさほど珍しいことではない。しかしその選手は主にゴールから離れた3ポイントライン付近からシュートを放ち、3ポイントシュートを7本沈めた。むろん、並の選手ならバスケをやめたくなるような強度で守っているにも関わらずだ。
お察しのとおり、この規格外のポイントゲッターこそが、当時桜丘高校(愛知)3年生の富永啓生だ。
「あの前半は歴史的というか、伝説になる展開だったよなあ」
当時桜丘の監督を務めた江崎悟(現・山梨学院高校男子バスケットボール部監督)は、感慨深そうにそう言った。
3年ぶりに出場したウインターカップで、インターハイ優勝校の開志国際を下すなどしてベスト4入り。組み合わせが決まって以来、綿密に対策してきた開志国際に勝った時点で大きな達成感があった。
「開志に勝って次に負けるのはもったいないなと思ったら次も勝ててベスト4。もう最高だ。福一に勝つ気はなかったよ。だって勝てるはずがねえから」
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