#1072
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「主観で選手を動かせたのは過去の話」“魔改造コーチ”倉野信次、アメリカで最先端を学ぶ<ソフトバンクで千賀滉大を育成>

2023/04/28
かつて指導した千賀も初登板初勝利など米国で活躍中
選手が次々に海を渡り、メジャーに挑戦する時代。ところが、指導者の例はまだほとんど聞かない。その未開の領域に踏み込んだ人間がいる。新天地で感じた日米のコーチング格差とは?(原題:[指導者も海外挑戦]倉野信次「魔改造コーチ、アメリカ武者修行中」Number1072号より)

倉野信次⇔マイナーリーガー<コミュニケーションの極意>
①キャッチボールの相手にすぐ立候補
②自分の経歴を口コミで浸透させる
③主観を裏付ける数字や映像を示す

◆◆◆

 ソフトバンクで一軍から三軍の投手コーチを歴任した倉野信次が今、テキサス・レンジャーズ傘下のマイナーリーグで投手育成コーチを務めている。2010年代のソフトバンクの黄金期に千賀滉大(現メッツ)ら数々の若手を育て、その手腕は“魔改造”とも呼ばれた。'21年シーズン後に退団。指導者としてのスキルアップを目指しアメリカへ渡った。1年間、無給でコーチ研修を積んだのち、言葉の壁に苦しみながらも持ち前のバイタリティーと人間力で信頼を勝ち取り、今年コーチに就任した。

 千賀のメジャーデビューは練習中だったので見られませんでした。でも、終わってからLINEで「おめでとう」と送りました。あの千賀がメジャーで投げているなんて出会った頃からは想像もつきません。育成ドラフト4位でソフトバンクに入った18歳の彼を三軍投手コーチとして間近で見ていて、入団当初は練習に全く付いていけず、残念な形で目立つ存在でした。

「もうだめです」

 そんな弱音を何度聞いたことか。時に鬼軍曹のようにしごき、時にモチベーションを引き出すことに心を配って接しました。本人の努力が成功の要因ですが、私のコーチ人生において「最も体力がなかった男」が、今やメッツの一員なのですから、人生は分からないものです。

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photograph by Yukihito Taguchi

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