#1049
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[会長付特別補佐兼インストラクターとして]イチロー@マリナーズの日々

2022/04/15
野球への探究心と、変わらぬ身体のフォルムに独自のルーティーン――。48歳のICHIROはまるで、現役メジャーリーガーそのままのように見える。ここまで情熱を注ぐ理由とは。その日常からイチ流の思考を浮き彫りにする。

 米アリゾナ州ピオリア。マリナーズキャンプ施設の一角に、いつもイチローがストレッチを行なう場所がある。ウエイトトレーニング場隣、人工芝が敷かれたピロティ。通りがかる選手、コーチたちほぼ全員が声をかけ、グータッチなどで挨拶を交わす。スマホでの記念撮影、握手をせがむ若手マイナー選手は少なめに見積もっても毎日3、4人。「ケ・パソ!(Que Paso=スペイン語の略式挨拶、ニュアンスは“調子どうよ?”)」。彼のよく通る声と、笑いがあふれる空間だ。

 労使交渉難航により、26日遅れで始まった2022年キャンプ。だがイチローは、その3週間以上も前、2月14日からアリゾナ入りして自主トレに励んでいた。昨年12月に女子野球高校選抜を完封して以来、肩の調子が思わしくない。少しずつ強度を上げ、メジャーキャンプ開始時には短い距離での球威が戻ってきたが、まだ80m以上の遠投ができない。

 4月15日にはマリナーズ本拠地開幕戦で始球式を務める。本人は肩が100%でない状態が悔しそうだ。とはいえ、48歳が150km以上の球を投げられなくても、誰も彼のことを責めはしないのだが……。

 イチローにとって今も昔も変わらないもの。それは野球に対する「本気」だろう。そして、その度合いはメジャーリーガーとしての現役を終えた後も変わらないどころか、ますます強まっているようにさえ見える。

 2021年シーズン中、彼は本拠地T-モバイル・パークでのナイター開始より5時間近く前にフィールドに現れた。ランニングに遠投、アラン・ターナー通訳を捕手役とした投球は2018年頃からのルーティーン。チームで誰よりも早い登場は、投手陣のキャッチボール相手や、室内ケージで若手野手の打撃投手を務めるためのウォームアップだった。

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photograph by Nanae Suzuki

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