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[ノンフィクション]鈴木隆行「どしゃぶりの日の少年」

2022/07/02
身振り手振りをまじえ熱く語りかける鈴木。基本的に全てのクラスを自身で指導している
ベルギー戦で日本に初の勝ち点をもたらした男は、常に逆境に身を置き、険しい道を切り拓いてきた。孤高の狼が、彷徨の先に見つけた予想外の現在地。角の取れた表情でなお、燃やし続ける情熱は――。

 品川は天王洲。大都会の片隅のナイター照明に照らされたサッカーコートでは、小学生のミニゲームが行われていた。子供たちから声は聞かれない。大声を響かせ続けているのは、自らゲームに参加して指示を出すコーチの鈴木隆行だ。

「前を向け! 周りを見ろ!」

 たびたびゲームを止めて、繰り返しやってみせる。その熱量は半端ではない。終了後も選手を集め、何度も「わかる? いい?」と確認しながら、視野の確保、オフザボールの頭と体の準備、基礎技術の重要性などを説き続ける。一度解散してからも「ホントにお前ら声出ないなぁ」と試合中の声の重要性について話が続く。教え方は理論的で、しつこいくらいに懇切丁寧だ。

 '15年に現役引退後、町のクラブで子供たちの指導をしていた鈴木は、昨年春「UNBRANDED WOLVES」という名のサッカースクールを自ら立ち上げた。開校したばかりの品川校は5校目。幼稚園のスクールも入れると全6校で、週6日、一日4~5時間にわたる指導に奔走している。

「選手のときより動いてますよ」

 にこやかに笑う声はガラガラだ。

「悪いところを理解させるだけでなく、どうやったらいいかまで教えないと意味がない。プロを目指している子たちなので、なあなあでは一切やらない。ついてこれなかったらやめてもらってもいい。今は基礎の徹底と、現代サッカーの大事なところを、言葉で説明するように心がけています。必ず上手くするために、愛情をもって。疲れますけど、やりがいがあります」

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photograph by Kisei Kobayashi

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