5月11日西武戦で9回を97球で投げ切り、史上84人目のノーヒットノーランを達成した。プロ入り当初から掲げる理想は「10安打完封」。快記録達成もその信条は揺らぐことはない。
5月11日、福岡PayPayドーム。
ノーヒットノーランの快挙を成し遂げた東浜巨だったが、じつは試合中にアクシデントと闘っていた。
「あの日は特に湿気が多くて蒸し暑かった。5回で50球も投げていなかったのに(49球)、もう右脚をつってしまって」
どちらかというと丁寧な投球で球数を要しながら抑えていくタイプだ。しかし、この日は相手の西武の早打ちというより、東浜の制球が素晴らしかった。きっちりゾーンに投げ込むから、打者はバットを出すしかない。それでいて直球が切れてシンカーも鋭く落ちる。敵はもうお手上げだった。
5回に脚がつってからは変化球多めの配球に切り替えた。東浜は言う。
「(甲斐)拓也のリードが僕の中では大きかった。ずっとバッテリーを組んできて、僕の良い時も悪い時も経験してくれている。だから、彼と一緒にとったノーヒットノーランだったと思います。あの日もイニングを投げ終わるたびに話し合い、マウンドの中では時に僕が我を通して、そういう駆け引きもしながら、うまくコミュニケーションをとれた」
9回表。最後の打者は金子侑司だった。東浜とは同学年で、一緒に大学日本代表でプレーしたこともある関係である。ラストボールを投げる前に東浜は2度、甲斐のサインに首を横に振った。
「出されたサインは外の真っ直ぐとシンカーでした。だけど、バッターの反応を見て、そこ(外角)に目がいっていたのが分かった。前に飛ぶ感じはなかったけど、またファウルも嫌。終わらせるならば、1球インコースに真っ直ぐを入れよう。結構、僕の中では勝負をかけたボールでした」
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photograph by SANKEI SHIMBUN