打っては3割6分の出塁率で打線を引っ張り、守っては多彩かつ巧みなリードで投手陣を支えた。三十路を超えて大きな成長をみせた中村が、重みある番号をつけ、新たなシーズンに臨む。
中村悠平の成長なくして、昨年の日本一はなかった――。高津臣吾監督はそう断言する。
「優勝できたのはバッテリー力の強化が進んだことが大きくて、そのなかで中村の果たした役割は計り知れなかった。加えてリーダーシップも発揮してくれて、相手が出塁した時に、自信をもって野手に指示を出していたのも頼もしく映りました。去年、中村にはなんらかの“意識革命”が起きたはずです」
30歳を超えた中村に、いったい何が起きていたのか? 中村本人は明快な答えを用意していた。
「2021年のキャンプが大きかったです。臨時コーチとして来ていただいた古田(敦也)さんの、『その気になれ』という言葉がすごく刺激になりました」
その前年、'20年のスワローズのチーム防御率は4.61でセ・リーグ6球団の最下位。'21年開幕時点で新戦力として期待できるのは高卒2年目の奥川恭伸くらいで、大きな上積みはないと見られていた。
「でも、古田さんがこう言ったんです。とにかく、お前ら捕手がその気になることが何より大切だって。防御率なんて関係ない。たしかに余所から見たら、力不足かもしれない。でも、お前らが投手を引っ張り、このメンバーで勝つ、投手との共同作業で一つひとつ勝って、優勝させるのがプロの仕事なんだと力強い言葉をいただいたんです」
古田の言葉を聞いて、中村には発見と驚きがあったという。理知的、理論的に投手陣をリードしていたと思っていた古田が、意外なことに「気持ち」で投手陣を引っ張っていたことだ。
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photograph by Nanae Suzuki