#1046
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[涙の準優勝]女子団体パシュート・高木美帆/高木菜那/佐藤綾乃「貫き通した3人だけの隊列」

2022/02/26
長年、苦楽を共にしてきた彼女たちしか成し得ない究極の滑走は、残り100mまで確実に相手を凌駕していた。コロナ禍も新戦術も越えて連覇へと攻めた、誇り高き3人娘の“銀”に迫る。

 世界一美しい隊列に何が起こったのか。連覇を狙ったスピードスケート女子団体パシュート決勝。日本は前回の金メダルメンバーであるエースの高木美帆、平昌五輪では女子マススタートと合わせて2冠に輝いた姉の菜那、そして同じく平昌金メダルメンバーの佐藤綾乃の3人がスタートラインに着き、一糸乱れぬワンラインで滑走を続けていた。

 決勝の相手は今季のW杯で3勝を挙げているカナダ。序盤からリードしていた日本が、冬季日本勢女子初の連覇という快挙を達成するまで残りわずかとなった地点で、悲劇は起きた。3人で組む隊列の最後尾にいた菜那がバランスを崩したのだ。

 時速約50kmのハイスピードで一糸乱れぬ隊列を保つのが日本の特徴。シンクロの粋を極めたワンラインは、400m×6周(2400m)で競うレースの残り100mを切った最終コーナーの頂点付近で突如崩れ、菜那が転倒した。だが、異変に気づいても前の2人は最後まで全力滑走を止めなかった。コーナーマットに体を打ち付けた菜那も顔をゆがめながらすぐに起き上がり、必死にゴールへ向かった。タイムは3分4秒47。2分53秒44の五輪新記録でゴールしていたカナダが初優勝し、日本は惜しくも銀メダルとなった。

 号泣する菜那。かける言葉が見つからず、ただただ肩を抱き続ける美帆。菜那の涙はどこまでも止まらなかった。美帆は自分のことのように唇を噛みしめた。

「起きてしまったことをどうすることもできないもどかしさがあり、一人で背負う必要はないと思っていても本人はそうはいかないというのも感じる。複雑な気持ちで、寄り添うことしかできなかった」

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photograph by Hiroyuki Nakamura
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