去就に揺れる鈴木誠也は、シーズンが終わった11月中も雲隠れすることもなく、連日のようにマツダスタジアムに姿を見せた。シーズン最終戦から3日後には来季へ向けて始動していた。
「休んでいる時間なんてない。あの3打席は、今でも頭から離れません、最後の三振も……。映像で見たらそんなに分からないんですけど、感覚的にすごく突っ込んでいる。今までやってきたことができなくて、崩れたんです」
下半身のコンディション不良もあり、2試合スタメンから外れていた鈴木は11月1日ヤクルト戦で先発出場し、3打数無安打に終わった。首位打者と最高出塁率のタイトル獲得が決まったものの、試合後は「今日でまた思い知らされました、自分がクソバッターだということを……」と吐き捨てるように言った。鈴木にしか見えていない景色があり、理想がある。
かねて希望していた米大リーグ挑戦の扉が開いたのはシーズン終了から2週間後の同16日。広島球団がポスティングシステムを利用しての米大リーグ移籍を容認した。
「楽しんでやりたいというのは、正直ない。遊びに行くんじゃないし、勝負しに行かないといけない。英語もしゃべれないし、食事も不安。でも、やっぱり向こうでいろんな国の選手と戦えることが楽しいんじゃないかなって」
球団がポスティングを認めてくれたからというより、世界各国の猛者たちが待ち受ける舞台への挑戦権を得た高揚感が、鈴木の表情を緩めた。夢ではない。選手としてさらに成長するため、戦うために海を渡る。
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