メジャー4年目の今季、リアル二刀流を完全解禁させた裏には、名将ならではの観察眼とコミュニケーション力があった。例のない挑戦の軌跡を振り返る。
今シーズン、大谷翔平はメジャー移籍後初めて、投手、野手の両方で八面六臂の活躍が可能になった。本人のコンディションはもちろん、昨季から指揮を取るジョー・マドン監督の起用判断が大きなポイントになったことは疑いようがない。知将の名をほしいままにするマドン監督はなぜ二刀流を完全解禁したのか。その理由を詳細に語った。
――今年は二刀流として、出場への制限をなくしたことが大谷選手の成績を大きく飛躍させたことになったと感じています。怪我のリスクも高まるなど、勇気のいる判断だったのではないでしょうか。
「キャンプイン前にペリー・ミナシアンGMとそのことについてたくさん話をして、『今シーズンは思いっきりやらせてやろう』という点で一致したんです。去年、監督に就任し、コロナの影響で短いシーズンでしたが、翔平を見ていて彼が楽しんでいるようにはとても見えなかった。制限が多く、自由を奪われているように見えました。もしかしたら、みんなが彼の面倒を見ようとしすぎていたのかもしれない。だから、春のキャンプで彼と話し合いました。投げる日も打って、その前日と翌日も打者で出場するのはどうかと。こちらからの制限は一旦なくして、常に話し合いの中で決めていこうじゃないかと提案しました。結果、今の彼を見てください。実に楽しそうに野球をやっているでしょう。あれが彼本来の姿であり、彼がアメリカでやりたかったことなんだと思います」
――投手出場時にDHを解除し打席に立たせ、しかもその前後も打者としてフル出場するのは疲れを感じることも多いと思います。
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photograph by Nanae Suzuki