五輪の陸上競技トラック種目で今も残る最古の日本記録、それが1991年に高野進が叩き出した400mの44秒78である。歴代2位は45秒03で、まだ二人目の44秒台もいない状況に当の本人は「昔の高野進が出した記録というだけで、今はそれが自分の記録なのか自分でもわからなくなってきました」と苦笑する。
吉原商高(現・富士市立高)入学後は棒高跳びをしていたが、右膝半月板損傷で短距離を始めた。2年で200mの全国の舞台を踏んだが、同高は1600mリレーがインターハイ入賞の常連校。その戦力として指名されたのが、400mを走るきっかけだった。400mの選手たちのきつい練習を見ていたので、最初は嫌で嫌で仕方なかった。「当時は自分で種目を選べるとは思っていなかったので、やるしかなかった」と振り返る。
「東海大に入ってからは全国3位になった200mと400mをやろうという気持ちでしたが、1年の関東インカレで400mで3位になり、記録もどんどん伸びたので……。嬉しい反面、後に引けなくなるなという複雑な気持ちで走っていました」
2年の関東インカレで優勝すると、3年になった'82年には46秒51の日本記録を樹立し、ここから高野の日本記録更新ロードが始まった。この年のアジア大会では400mで優勝し、200mは6位。世界への挑戦を考えるなら400mだと確信した。
「好きな種目でもなかったけれど、それまで自信を持てるものは何もなかった自分が、ようやく見つけたというか。自分の持っているものをすべてぶつければ勝負できるという感じで。闘争本能に火が付くのは400mだったのかなという気がするし、練習も含め、何かに取り付かれたようにやっていましたね」
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